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創世記 29 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

創世記 29

¹ヤコブは旅を続けて行き、東の人々の国へ行った。

²ふと見ると、野に一つの井戸があって、そのそばに三つの羊の群が休んでいた。その井戸から羊に水を飲ませることになっていたのである。井戸の口の所には、大きな石が置いてあった。

³羊の群がそこに集まって来ると、井戸の口からその石をわきへころがして、羊に水を飲ませ、それが終ると、また、その石を井戸の口の所に置くことになっていた。

⁴ヤコブは羊飼たちに尋ねた。「あなたがたは、どこの人たちですか。」彼らは答えて、「カランの者だ」と言った。

⁵ヤコブが、「それでは、ナホルの子のラバンという人を知っていますか」と聞くと、「ああ、知っているよ」と彼らは答えた。

⁶ヤコブが、「彼は元気でしょうかね」と言うと、「ああ、元気だとも。ほら、あそこに来るあの娘がラバンの娘だよ。羊を連れて来るだろう」と答えた。

⁷突然ヤコブは言った。「日はまだ高いですし、家畜を集めて水をやるのは、少し早過ぎませんか。羊に水を飲ませたら、また行って、羊の世話をしてやった方が、よくはありませんか。」

⁸それに対して、彼らはこう言った。「羊の群が全部集まって来るまでは、それはできないんだ。みんな一ぺんにやることになっているからね。」

⁹ヤコブがなおも彼らと話し合っていると、そこへラケルが父の羊を連れてやって来た。羊の世話をしていたのである。

¹⁰ヤコブは、母の兄ラバンの娘ラケルと彼女が連れていた羊を見た。そして、ヤコブは進み寄ると、井戸の口に置いてあった石をわきへころがし、彼女の羊に水を飲ませてやった。

¹¹それから、ヤコブがラケルに口付けし、声を上げて泣き出した。

¹²ヤコブは自分がリベカの子供であることをラケルに告げると、ラケルは走って行って、そのことを父に話した。

¹³ラバンは、妹の子のヤコブのことを聞くと、彼を迎えに走って行き、彼を抱いて口付けし、自分の家に連れて来た。ヤコブは一部始終をラバンに話した。

¹⁴ラバンは彼に、「身内のお前が、本当によく来てくれた」と言った。ヤコブがラバンの所で歓待されているうちに、一か月ほどが過ぎてしまった。

¹⁵ある日、ラバンはヤコブに話した。「お前はいくら身内だからと言っても、ただで働くことはないんだよ。何でも欲しいものがあったら言っておくれ。」

¹⁶ラバンには二人の娘がいて、姉はレアと言い、妹はラケルと言った。

¹⁷レアは近眼であったが、ラケルはなかなかの美人であった。

¹⁸ヤコブはラケルの方が好きだったので、「私はラケルと結婚できれば、あなたの下で七年間働いてもよろしゅうございます」と言った。

¹⁹ラバンは答えた。「他人と結婚させるよりも、気心の知れたお前の嫁にした方がよいだろう。私の所にいるがよい。」

²⁰こうして、ヤコブはラケルと結婚したいために七年間そこで働いたが、ラケルを愛していたので、それは、ヤコブにとって、わずか数日のようにしか感じられなかった。

²¹ヤコブはラバンに話した。「もう約束の七年がたちました。ラケルと結婚させてください。」

²²ラバンはみんなを集めて結婚式を挙げ、祝宴を催した。

²³その夜、ラバンはラケルの代りにレアを連れて来たので、ヤコブはレアと一緒に寝た。

²⁴ラバンは、自分の所で働いていた下女のジルパを、娘レアの下女として与えた。

²⁵朝になってみると、ラケルとばかり思っていたのが、実はレアであることが分り、ヤコブはラバンに抗議した。「伯父さん。どうしてこんなことをなさったのですか。私はラケルと結婚できるというので、ここで働いてきたのではありませんか。それなのに、どうして伯父さんは私をだましたのですか。」

²⁶ラバンはそれに対して答えた。「この辺りの習慣では、姉よりも先に妹が結婚するというようなことはないんだ。

²⁷今週はレアと一緒にいてくれ。そうすれば、ラケルもお前の嫁にしてやるから。その代り、もう七年間働いてくれよ。」

²⁸ヤコブはラバンの言う通り、その週はレアと一緒に過した。それから、ラバンはもう一人の娘ラケルを、ヤコブの嫁として与えた。

²⁹ラバンは、自分の所で働いていた下女ビルハを、娘ラケルの下女として与えた。

³⁰ヤコブは、ラケルとも一緒に寝た。彼はレアよりもラケルの方を愛した。そして、さらに七年間ラバンの所で働いた。

³¹主は、レアがヤコブから余り好意を持たれていないのをご覧になって、子供が出来るようにされたが、ラケルには子供が出来なかった。

³²レアは妊娠して子供を産み、名前をルベンと付け、こう言った。「主は、私の悩みをご覧になったので、これからはあの人も私に目を掛けてくれることでしょう。」

³³彼女はまた妊娠して子供を産み、「主は、私が好意を持たれていないのをご存じで、私に子供をお与えくださった」と言って、その子供の名前をシメオンと付けた。

³⁴彼女はまた妊娠して子供を産み、「私はもうあの人の子供を三人も産んだのだから、今度こそあの人は私の所に来るでしょう」と言って、その子供の名前をレビと付けた。

³⁵彼女はまた妊娠して子供を産み、「今度は主をほめたたえます」と言って、その子供の名前をユダと付けた。それから彼女は子供を産まなくなってしまった。