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創世記 42 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

創世記 42

¹ヤコブはエジプトに穀物があることを聞いて、息子たちに言った。「お前たちは、顔を見合せてばかりいても仕方があるまい。

²エジプトには穀物があるということだぞ。お前たちはあそこへ行って、穀物を買って来てはくれないか。そうすれば、われわれは餓死せんでも済むというものだ。」

³そこで、ヨセフの十人の兄たちは、穀物を買うためにエジプトへ下って行った。

⁴しかし、ヤコブはヨセフの弟ベニヤミンだけは、兄たちと一緒に行かせなかった。万一のことがあるといけないと思ったからである。

⁵こうして、ヤコブの子供たちは、ほかの人々と一緒に、穀物を買いにエジプトにやって来た。ききんがカナンの地を襲っていたからである。

⁶ヨセフはエジプトの国務長官であって、また食糧庁の長官も兼ねていた。そこで、穀物の売買の総責任者でもあった。ヨセフの兄たちは来て、地にひれ伏すようにして、頭を下げた。

⁷ヨセフは兄たちを見て、すぐに分ったが、見知らぬ者のようにして、荒々しい言葉を使った。「お前たちはどこから来たのか。」彼らは答えた。「食糧を買うために、カナンの地から参りました。」

⁸ヨセフは、彼らが兄たちであることを知っていたが、彼らはその人がヨセフであることを知らなかった。

⁹ヨセフは、以前見た夢のことを思い出していた。

¹⁰そして彼らに語った。「お前たちはスパイであろう。この国のすきをうかがいに来たに相違あるまい。」彼らは必死になって弁解した。「とんでもございません。長官閣下。私どもは食糧を買いに来ただけでございます。

¹¹私どもは、同じ一人の人の子供たちで、氏素姓の不確かな者ではございません。スパイなど、めっそうもございません。」

¹²ヨセフは落ち着いて言った。「いや、いや。お前たちは確かにこの国をうかがいに来たに相違ない。」

¹³彼らは必死であった。「私どもは十二人兄弟でして、カナンの地にいる一人の人の子供たちでございます。一番下の弟は今私どもの父と一緒におります。

¹⁴また、もう一人の弟はいなくなってしまいました。」ヨセフはますます荒々しく語った。「いよいよお前たちに言った通りだ。お前たちはスパイだ。

¹⁵その通りかどうか、試してやる。これは王様の命に懸けて誓うのだぞ。

¹⁶お前たちのうちの一人を国へ帰して、ここへ弟を連れて来い。その間、ほかの者たちは監禁所にいなければならない。よいか。お前たちがうそを言っていないかどうか、お前たちの言った言葉を試してやろう。もしこのことができなければ、やはりスパイに相違あるまい。」

¹⁷ヨセフは、彼らを全員三日間、監禁所に入れておいた。

¹⁸三日目に、ヨセフは彼らに言った。「余は神様を恐れる者である。よって、お前たちに助かる機会を与えてやろうと思う。

¹⁹もしお前たちが本当に確かな者なら、だれか一人をこの監禁所に残しておき、家族の飢えを救うため、穀物を持って帰ってもよいぞ。

²⁰その代り、今度来る時には、必ず末の弟をここに連れて来るのだ。そうすれば、お前たちの言っていることが、本当だということが分るし、お前たちも死ななくて済むことになろう。」彼らはその勧めに従った。

²¹それから、彼らは互いにこう話していた。「確かに、われわれはヨセフのことでひどいことをしたからな。今罰を受けているんだよ。あんなに助けてくれと言ったのに、助けてやらなかったしな。それで、今罰を受けているんだよ。」

²²ルベンは、彼らに答えて、こう言った。「あの時、私はお前たちに、この子をひどい目に遭わせちゃいかんと言ったじゃないか。それなのに、みんな聞き入れてくれなかったぞ。だから、今度はその報いが来ているというわけだ。」

²³彼らは、自分たちがヘブル語で話しているのを、そこにいるヨセフが理解していたとは、つゆも知らなかった。お互いの間に通訳がいたからである。

²⁴ヨセフは、彼らから離れて行って、そこで泣いた。やがて、また戻って来て、彼らに話し、シメオンを捕えて、彼らの目の前で縛った。

²⁵それから、ヨセフは彼らの入物に穀物を一杯入れてやり、それぞれの支払った代金を袋の中に返し、また、帰りの道中の食糧も十分与えた。

²⁶彼らは穀物をろばに背負わせて、そこを去った。

²⁷宿に着いて、その一人が自分のろばに飼葉をやろうとして、袋をあけてみると、袋の口には、支払ったはずのお金があった。

²⁸彼はほかの兄弟たちに言った。「私の支払ったお金が返されている。しかもご覧よ、私の袋の中にある。」そこで、彼らは非常に驚き、震え上がって、互いに顔を見合せた。「神様がこうしてくださったんだ。でも、これはどういう意味だろう。」

²⁹彼らは、カナンの地にいる父ヤコブの下に帰り、その身に起ったことを皆、話した。

³⁰「あの国の長官は、私たちに話す時つっけんどんで、私たちのことをスパイだと言うのです。

³¹それで、私たちは、『とんでもありません。私どもは決して氏素姓の不確かな者ではございません。スパイなどめっそうもない。

³²私どもは十二人兄弟で、同じ父の子供でございます。一人の弟はいなくなりましたが、一番下の弟は今、父と一緒にカナンの地におります』と答えたのです。

³³すると、その長官は、こう言うのです。『余は、お前たちが本当に確かな者であるかどうかを試してやる。お前たちのうちの一人をここに残しておき、家族の飢えを救うため、穀物を持って、帰って行ってもよいぞ。

³⁴その代り、今度来る時には、必ず末の弟をここへ連れて来るのだ。そうすれば、お前たちがスパイではなく、確かな者であることが分る。その上で、預っておいた兄弟を返してやる。さらに、この地で取り引きすることも許すぞ。』」

³⁵彼らが袋の中のものを取り出してみると、それぞれが支払った代金が、袋の中にあったので、彼らも父も、それを見て大変恐れた。

³⁶父ヤコブは彼らに話した。「お前たちは、以前私の子供ヨセフを亡くしてしまった。そして、また、シメオンもいなくなってしまった。今度はベニヤミンを連れて行こうとしている。皆、私の意に反して起るのう。」

³⁷ルベンは見るに見かねて、こう父に語り掛けた。「お父さん。私がきっと保証します。もしベニヤミンをここへ連れ戻さないようなことにでもなれば、私の子供をその身代りとしても結構です。どうかあの子を一緒に行かせてください。きっと連れて帰って来ます。」

³⁸ヤコブは悲しそうに言った。「あの子を連れて行ってはならん。あの子の兄もいなくなってしまったのだし、もうあの子一人しか残っておらんのだ。もしあの子の身の上に万が一のことでもあれば、私はどうなる。悲しみで狂い死ぬことだろう。」