Read 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 創世記 44 Bible Online

創世記 44 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

創世記 44

¹ヨセフは自分の家の執事に、このように命じた。「この人たちの袋の中に、詰められるだけの食糧を詰め、それぞれが支払った代金を、袋の中に入れておくように。

²また余の大事にしているあの銀の杯を、一番年下の者の袋の中に、穀物の代金と一緒に入れておいてくれ。」彼は言い付けられた通りにした。

³夜が明けると、彼らは荷物を積んだろばと一緒に送り出された。

⁴彼らが町を出て、まだ遠くへ行かないうちに、ヨセフは自分の家の執事に言い付けた。「さあ、あの連中の後を追え。追い付いたら、こう言うのだ。『お前たちは、どうして恩を仇で返すのか。

⁵これは、いつもご主人様がお使いになっている大事な杯だ。どうしてこれを取って行くのか。』」

⁶執事が彼らに追い付いて、言われた通りに言うと、

⁷彼らは驚いて、こう言った。「とんでもございません。何かの間違いではございませんか。私どもは決してそのようなことはいたしておりません。

⁸袋の中に入っていた代金も、お持ちして、お返ししたではございませんか。どうしてそんな大事になさっていらっしゃる物を取ったりいたしましょうか。

⁹私どものうちで、もしもそれが見付かる者がございましたら、それがだれでございましょうとも、その者は殺されても構いませんし、私ども全員、長官閣下の奴隷としていただきましても結構でございます。」

¹⁰執事はこう言った。「それでは、お前たちのそのけなげな申し出に免じて、こういうことにしてやろう。その杯を持っていた者は、奴隷になるのだぞ。しかし、そのほかの者たちは国へ帰ってもよろしい。よいな。」

¹¹そこで、彼らはそれぞれ急いで袋を地に下ろし、一人一人その袋を開いた。

¹²執事は、年長の者から調べて、一番年下の者に及んだところ、杯はベニヤミンの袋の中で見付かった。

¹³すると、彼らは服を裂いて悲しみ、ろばに荷を積んで、町に引き返した。

¹⁴ユダと兄弟たちは、ヨセフの家に入って行ったが、そこにヨセフが立っていたので、彼らは地にひれ伏すようにして、頭を下げた。

¹⁵ヨセフは彼らに言った。「お前たちはなんということをしたのだ。

¹⁶余がすべてを見通していることを知らなかったのか。」その時、ユダが申し出た。「なんとも申しわけございません。もはや弁解も何もできません。また、いたそうとも思いません。神様が私どもの罪をあばかれたのでございます。私どもも、杯を持っているのが見付かった者も、一緒に、長官閣下の奴隷とさせていただきます。」

¹⁷すると、ヨセフは言った。「余はそのようなことをせぬ。ただ杯を持っているのを見付けられた者だけが、余の奴隷となるのだ。そのほかの者は安心して父の下に帰るがよいぞ。」

¹⁸この時、ユダはヨセフの所に近付いて、申し上げた。「長官閣下。お願いでございます。なにとぞ一言だけ申し上げますことをお聞きいただきとうございます。

¹⁹以前、閣下が、『お前たちには父がいるか、また弟がいるか』とお尋ねになったことがございました。

²⁰あの時、私どもは年老いた父と末っ子の弟がいると申し上げました。しかも、その弟というのは、同じ母から生れました兄がいなくなりましたため、父が、ことのほか愛しているのでございます。

²¹あの時、閣下は私どもに、『今度来る時には、必ずその弟を連れて来い。その者を見たいものだ』と仰せられました。

²²あの時、私どもは閣下に申し上げました。『弟を父の所から連れて来ることはできません。父から離したら、父は死んでしまいます。』

²³けれども、閣下は、『末の弟が一緒でなければ、もう二度とここへ来てはならん』と仰せられました。

²⁴私どもが父の下へ帰りました時、父に閣下のお言葉を伝えました。

²⁵そして父が、『もう一度エジプトへ食糧の買い出しに行って来てくれ』と申しました時、

²⁶私どもはこう父に申しました。『末の弟を一緒に連れて行くのでないなら、エジプトへ行くことはできません。閣下の前に立つことはできません。』

²⁷すると、父は私どもにこう申しました。『お前たちも知っての通り、ラケルは私の子供を二人産んだが、

²⁸そのうちの一人は出て行ったまま、帰って来ない。おそらく野獣に裂き殺されたに違いない。今もって帰って来ない。

²⁹お前たちがまたこの子まで、私の手から連れ去ってしまい、万一のことでも起ったら、私は悲しみで狂い死ぬことだろう。』

³⁰こういうわけでございますから、私が父の下に帰りました時、もしもこの子が一緒でございませんと、

³¹それを見ただけで父はきっと死んでしまいます。私どもが父を悲しみのうちに死なせてしまいます。

³²私は父に約束して参りました。『もしもこの子を連れて帰ることができない時には、私はお父さんに対して、永久に責任を負います。』

³³お願いでございます。この子の代りに私を閣下の奴隷としてくださり、この子は兄たちと一緒に帰らせていただきとうございます。

³⁴私はこの子を連れずに帰るわけには参りません。父が悲しみ嘆くのを見るにしのびないのでございます。」