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サムエル記2 12 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

サムエル記2 12

¹主は預言者ナタンをダビデの所に遣わされたので、彼はダビデの所に来て、こんな話をした。「ある町に二人の人がいました。一人は金持で、もう一人は貧乏人でした。

²金持は、沢山の羊と牛を持っていましたが、

³貧しい人は、自分で買って来た雌の子羊一頭のほかは、何も持っていませんでした。その子羊は家族と一緒に育てられ、まるで娘のようにかわいがられました。

⁴ある時のこと、金持の所に、一人の旅人が来ました。すると、その金持は、沢山持っている自分の羊や牛の中から取ることを惜しんで、たった一頭しか持っていない貧しい人の子羊を取って来て、それでごちそうを作って出してしまいました。」

⁵ここまで話をすると、心にやましさを持っていたダビデは、かんかんに怒って、こう言った。「主は生きておられる。そのようなことをした男は死刑にしなければならない。

⁶その男は、それだけでなく、そんな情容赦もないことをしたのだから、その雌の子羊を四倍にして償わなければならない。」

⁷すると、ナタンはダビデに言った。「王様。あなたがその男でございます。イスラエルの主である神様は、こう仰せられます。『わたしはあなたに油を注いで、イスラエルの王とし、サウルの迫害から救い出してやった。

⁸さらに、あなたの主人の財産を与え、イスラエルとユダの王国も与えた。それでもなお少ないと言うのなら、さらに多くのものを与えてやっただろう。

⁹それなのに、どうしてあなたはわたしの教えをないがしろにして、このような悪事を行ったのか。わたしに分らないとでも思うのか。ヘテ人ウリヤを殺し、その妻を自分のものとした。ウリヤを殺したのはあなたであり、あなたがアモン人に殺させたのだ。

¹⁰だから、これからは一族に殺害がつきまとう。あなたがわたしを侮り、ヘテ人ウリヤの妻を自分のものとしたからだ。

¹¹よく聞くがよい。一族の中からあなたに背く者が出て来る。また、妻たちはほかの者に取られる。ほかの男たちが白昼公然と彼女たちと寝るだろう。

¹²あなたはこっそりそのことをしたが、彼らは全イスラエルの前で、このことを行う。それは、わたしがそれを許すからだ。』」

¹³ダビデはナタンに言った。「余は主に対して罪を犯した。」すると、ナタンはそれに答えた。「主は今、王様の罪を取り除いてくださいました。ですから、決して死ぬことはありません。

¹⁴けれども、王様。あなたは、このことによって王様に敵する者たちに、主を侮る絶好の機会を与えたので、今度生れて来る子供は必ず死にます。」

¹⁵こうして、ナタンは自分の家に帰って行った。主は、ウリヤの妻であった婦人が産んだダビデの子を、罰として病気にかからせた。

¹⁶ダビデは、引きこもり、その子が治るように、一晩中、ひれ伏し、断食して神に祈った。

¹⁷ダビデの家に仕える者たちは、ダビデのそばについて、彼を地から起そうとしたが、ダビデは起き上がろうともせず、また、食事も取ろうとはしなかった。

¹⁸七日目にその子は死んだが、皆恐れて、ダビデに告げようとはしなかった。「王様は、お子様が病気になったことで、あれほど悲しんでおられるのだから、もし死なれたことを聞かれたら、何をなさるか分らない」と思ったからである。

¹⁹しかし、ダビデは彼らの様子から、すぐに子供が死んだことを悟った。それで、「子供は死んだのか」と尋ねたので、彼らは、「亡くなられました」と答えた。

²⁰すると、ダビデは起き上がり、体を洗い、香水を付け、服を着替えて、主の神殿に入り、礼拝をしてから、自分の家に帰った。そして食事の用意をさせて、食事を取った。

²¹それを見ていた家来たちは、ダビデに尋ねた。「王様のなさったことは、さっぱり分りません。お子様が生きておられる時には、泣いて断食して祈っておられましたのに、お子様が亡くなられますと、起き上がって、食事をなさっておられます。」

²²ダビデは答えた。「子供がまだ生きていた時、余が泣いて断食までして祈ったのは、もしかすると、主が余をあわれんで、子供を生かしておいてくださるかもしれないと思ったからだ。

²³しかし、主の御心はそうではなかった。子供は死んでしまった。どうして断食して祈る必要があろうか。あの子をもう一度呼び戻すことができるだろうか。余は死ねばあの子の所へ行くことになろうが、あの子をもう一度この世に呼び戻すことはできない。」

²⁴ダビデは妻のバテ・シェバをかわいそうに思い、彼女と一緒に寝ては、彼女を慰めてやった。やがて彼女は妊娠し、男の子を産み、その子にソロモンという名前を付けた。主はその子を愛されたので、

²⁵預言者ナタンを遣わして、その子をエディデヤという愛称で呼ぶようになった。

²⁶ヨアブはアモン人の立てこもる首都ラバの町を攻略した。

²⁷ヨアブはダビデに使者を送って、こう言わせた。「ラバの町を攻略しました。あの港も手中に収めました。

²⁸どうか残りの部隊を引き連れて、最後の総仕上げをなさってください。勝利の栄冠は、王様がお受けになるためでございます。」

²⁹そこで、ダビデは残りの部隊を引き連れて、ラバへ行き、ついに町を完全に占領した。

³⁰多くの分捕物を持って来たが、その中には、宝石を散りばめた金製の王冠があって、その王冠は、ダビデの頭上に置かれた。

³¹その町の人々を捕虜として連れて来て、石ののこぎりや、鉄のつるはしや、鉄の斧を使う仕事や、れんが造りの労働に就かせた。ダビデは、ラバだけでなく、アモン人の町すべてを同様に扱った。こうして、ダビデとイスラエルの民は皆エルサレムに帰還した。