Read 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 サムエル記2 14 Bible Online

サムエル記2 14 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

サムエル記2 14

¹ツェルヤの子ヨアブは、王がアブシャロムを討ちたいという気持を持っていることを知っていた。

²そこで、ヨアブはテコアに人をやり、そこから一人の知恵のある女を連れて来て、彼女にこう頼んだ。「そなたは喪中の女を装い、喪服を着て、

³王様の所へ行き、王様に申し上げてもらいたいことがある。」そして、王に申し上げるべきことを教えた。

⁴テコアの女は、言われるままに王の所へ行き、地にひれ伏し、哀願した。「王様。お助けいただきとうございます。」

⁵王は彼女に言った。一体、どうしたというのだ。」すると、彼女はヨアブに言われる通りに話した。「実は、私は夫を亡くした未亡人でございます。

⁶二人の息子がおりましたが、二人が野原でけんかをし、だれも仲裁する者がおりませんでしたので、一人がもう一人を殺してしまいました。

⁷そういたしますと、親族全体が私にこう申すのでございます。『兄弟を殺したような者は生かしておくわけにはいかぬ。あれも殺して、後継ぎをなくしてしまえ。』親族の者たちは、このように申して、この家を断絶させようとしているのでございます。」

⁸王は女に言った。「よく分った。そういうことのないように計らおう。余はそのことについて命令を出すことにしよう。」

⁹テコアの女は王に申し上げた。「王様。もしもこのことで王様が責めをお受けになるようなことがございましたら、それはすべて私の責任でございます。」

¹⁰王は答えた。「その方に何か言う者がおれば、余の下に連れて来るがよい。余が決着を付けてやる。」

¹¹そこで、彼女は言った。「王様。どうか主である神様にお誓いください。復讐をする者が殺人を繰り返すことがなく、私の息子が殺されないでも済むようにお願いいたします。」王は約束した。「主にかけて誓おう。その方の息子は決して死ぬことはない。」

¹²すると、その女は勇気を出して、王に申し上げた。「王様。もう一つだけお願いがございます。」王が許すと、

¹³彼女は話し出した。「王様は、どうしてこの私にさきほどお約束くださったことを、すべての民に当てはめてはくださらないのですか。王様は、先ほど私にお約束くださったことと違うことをご自分でなさっていらっしゃるのですから、ご自分がそれに背いていらっしゃることになります。王様は、追放された王子様の戻って来られるのを拒んでおられるのではありませんか。

¹⁴私どもはやがて死ななければならない者たちです。ちょうど地面にこぼれた水のようで、もう一度元に戻すことはできません。一度死んだら、もうおしまいです。どうか追放された王子様をそのままにしておかれませんようにお願いいたします。

¹⁵私が王様にこのことを申し上げに参りましたのは、私がこの国の民を恐れたからでございます。王様は、きっと私の申し上げることを聞き届けてくださるに違いないと思っておりました。

¹⁶王様は、私の願いを聞き入れて、私と息子を神様の与えてくださった土地から断絶させてしまおうとたくらんでいる者たちの手から助け出してくださるに相違ございません。

¹⁷それで、私は王様からお言葉を頂き安心したいと思ったのでございます。主である神様が、王様と一緒にいてくださいますように。」

¹⁸すると、王はその女に言った。「そうか。余がこれから尋ねることに、隠さず答えてくれ。」女が、「王様。どうぞおっしゃってください」と答えると、

¹⁹王は尋ねた。「これは皆、ヨアブの差金であろう。」女は恐る恐るそれに答えた。「王様。確かにその通りでございます。王様の仰せに対しては、一体だれがそれに背くことなどできましょうか。私は正直に申しますが、確かにヨアブ様のご命令でございます。私に何を言うべきかということまで、詳しくお教えくださいました。

²⁰ヨアブ様は、なんとか事態を改善しようとして、このことをご計画になりました。王様は何でもよくご存じですから、私は今正直に申し上げたわけでございます。」

²¹そこで、王はヨアブを呼び寄せて、こう言った。「余はその方の願いを聞き入れたぞ。行って、アブシャロムを連れ戻して来るがよい。」

²²ヨアブはその場にひれ伏し、感謝の言葉を述べ、王に祝福があるようにと申し上げた。「王様のご好意にあずかりまして恐縮至極に存じます。王様は、このような者の願いをお聞き入れくださいまして、ありがとうございました。」

²³ヨアブはすぐゲシュルへ行き、そこからアブシャロムをエルサレムへ連れて来た。

²⁴王は言った。「あれは自分の家で謹慎させておけ。余の顔を見ることはならぬ。」そのため、アブシャロムは自分の家にこもったまま、王の所へは出て来なかった。

²⁵ところで、アブシャロムは、スマートで、ハンサムであった。人々はそのことで彼にあこがれていた。

²⁶彼は髪の毛もふさふさしており、毎年、その年の終りにはその髪の毛を刈ったが、一・五キロほどもあった。

²⁷アブシャロムには、三人の息子と一人の娘がおり、その娘はタマルと言って、大変美しい娘であった。

²⁸アブシャロムは二年間エルサレムに住んでいたが、王には一度も会わなかった。

²⁹そこで、ヨアブに仲介を頼もうと思って人をやったが、彼は来ようとしなかった。それで、もう一度人をやったが、それでも来ようとはしなかった。

³⁰とうとうアブシャロムは家来たちに、「私の畑の隣にあるヨアブの畑の大麦に火を付けて来い」と言ったので、彼らはその通りにした。

³¹すると、ヨアブはアブシャロムの家にやって来て、抗議した。「どうして、あなたの家来たちは、私の畑に火を付けたのですか。」

³²アブシャロムはヨアブに答えた。「私は人をやって、ここに来てくれと言ったではないか。私はその方を王様の所へやって、「『私と会ってくださらないなら、ゲシュルにいた方がよかったです』と言ってもらいたかった。私は王様に会いたいのだ。その時、私の罪が問われて死刑になっても望むところだ。」

³³そこで、ヨアブは王の所に行き、王に告げたので、王はアブシャロムを召し入れた。アブシャロムは王の前に出ると、そこにひれ伏した。王はその姿を見て、アブシャロムに口付けした。