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サムエル記2 18 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

サムエル記2 18

¹ダビデは全軍を編成し直し、連隊長、中隊長を任命した。

²さらに全軍を三分して、それぞれの司令官として、ヨアブと、ヨアブの弟アビシャイと、ガテ人イタイを任命した。ダビデは自ら陣頭に立ちたいと願っていたが、

³それについては、家来たちの猛反対に会った。「王様。それはいけません。私どもが逃げ出そうと、私どもの半分が死のうと、彼らには、どうでもよいことです。しかし、王様は、私どもの一万人にも当るお方です。ですから、王様は町においでになって、私どもを助けてくださるのがよろしいのです。」

⁴そこで、王は、「その方たちが言う通りにしよう」と言った。王は町の門に立って、全軍が出陣するのを見送った。

⁵王は、ヨアブ、アビシャイ、イタイの三人の司令官に、「余に免じて、あの若いアブシャロムには、手心を加えてやってくれ」と命じた。兵隊たちは、王が三人の司令官に命じているのを聞いていた。

⁶こうして、ダビデの軍は、イスラエル軍を迎え撃つために戦場に出て行った。戦いは、エフライムの森で行われた。

⁷イスラエル軍は、ダビデ軍に敗北し、その日、そこで多くの者が戦死し、その数は二万人にのぼった。

⁸戦いは、その地方全体に広がり、戦闘で死んだ者よりも、森の中で行方不明になった者の方が多かった。

⁹その戦いの最中、アブシャロムは、ダビデ軍の兵隊に遭遇した。その時、アブシャロムは騾馬に乗っていたが、大きな樫の木の下を通り掛り、アブシャロムの頭がその大きな枝に引っ掛り、騾馬はそのまま行ってしまったので、彼は宙づりになってしまった。

¹⁰それを見たダビデ軍の兵隊は、そのことをすぐヨアブ司令官に知らせた。「アブシャロムが樫の木に引っ掛っています。」

¹¹それを聞くと、ヨアブは言った。「どうして、すぐ殺してしまわなかったのか。そうしておれば、銀十枚と帯一本をほうびとして与えたのに。」

¹²すると、その兵隊は答えた。「たといどんなご報賞にあずかりましても、私は王子様に手を下すわけには参りません。王様は、私どもの聞いている所で、三人の司令官に、『余に免じて、あの若いアブシャロムを殺さないでくれ』と仰せられたではありませんか。

¹³私が王様のご命令に背いてそのことをしても、司令官が最後まで私をかばってくださいますか。きっとそうはしてくださらないでしょう。」

¹⁴ヨアブは、「こうしてはおれんぞ」と言うが早いか、三本の槍を取り、樫の木に引っ掛ったままでいたアブシャロムの所へ行き、心臓を一突きにして殺した。

¹⁵ヨアブと一緒に来た十人の家来も、アブシャロムに最後のとどめを下した。

¹⁶ヨアブがラッパを吹き鳴らさせたので、ダビデ軍の兵隊は、イスラエル軍を追撃するのをやめ、引き揚げて来た。

¹⁷彼らはアブシャロムの死体を引き下ろし、森の中の深い穴に投げ込み、その上に石を積み上げた。イスラエル軍の兵隊たちは、皆てんでに自分の天幕に逃げ帰った。

¹⁸生前アブシャロムは、王の谷に自分の記念碑を建てていた。「私には、跡取り息子がいないからだ」と言っていた。彼はその記念碑に自分の名前を刻み付けた。それは、アブシャロムの記念碑と呼ばれ、この書物を書いている今も残っている。

¹⁹ツァドクの子アヒマアツはヨアブに申し出た。「私はこれから走って行って、主が王様に勝利をお与えになったことを報告したいと思いますが、よろしいでしょうか。」

²⁰すると、ヨアブは言った。「今日は駄目だ。ほかの日なら、よろしい。今日は王子が死んだばかりだから、王様に知らせることはならん。」

²¹こう言いながら、ヨアブはすぐに一人のエチオピヤ人に命じた。「お前は王様の所へ行って、見たままを王様に報告しろ。」そのエチオピヤ人はすぐに走って行った。

²²それを見ていたツァドクの子アヒマアツは、ヨアブに重ねて願い出た。「私もあのエチオピヤ人の後を追って行きたいのですが、よろしいでしょうか。」すると、ヨアブは、「いくら行っても無駄だ。何も褒美はもらえんぞ。」

²³「そんなことは構いません。どうかお願いします。行かせてください」と言うので、ヨアブはそれを許した。すると、アヒマアツは低地の平原を走って近道をし、とうとうエチオピヤ人を追い越して行った。

²⁴その時、ダビデは町の門の所に腰を掛けていた。見張りの者が城壁の門の屋根の上で見ていると、一人の男が走って来るのが見えた。

²⁵見張りの者が大声で王に知らせると、王は言った。二人か。それなら吉報に相違ない。」その男が次第に近付いて来た時、

²⁶見張りの男には、もう一人の男が走って来るのが見えた。見張りの男は、「また一人の男が向うから走って来ます」と叫ぶと、王は、「それも吉報を持って来るのだ」と言った。

²⁷見張りの男は、「先に走って来るのは、どうもツァドクの子アヒマァツのようです」と言うと、王は、「あれはいいやつだ。吉報だ、吉報だ」と言った。

²⁸アヒマアツは王の前に来ると、ひれ伏して申し上げた。「主である神様は、すばらしいことをしてくださいました。王様に反逆した者たちを全部滅ぼしてしまわれました。」

²⁹王が、「若いアブシャロムはどうだ。無事か」と聞いたので、アヒマアツは、「ヨアブ司令官から私がこの使いを言付かりました時、何か騒ぎがあったのは存じておりますが、詳しいことはよく分りません」と答えた。

³⁰王が、「そうか。そこで待っておれ」と言ったので、彼はそこに立っていた。

³¹そこへエチオピヤ人が入って来た。「王様。主は、今日王様に反逆した者たちを全滅され、勝利を与えてくださいました。」

³²王がエチオピヤ人に、「若いアブシャロムはどうだ。無事か」と聞いたので、エチオピヤ人は答えた。「殺されました。王様に反逆する者たちには、いい見せしめとなりましょう。」

³³王は悲しみの余り体をガクガクさせながら、門の上の部屋に上って、そこで泣いた。そして、泣きながら、こう叫んだ。「ああ、アブシャロム、アブシャロム。余がその方に代って死ねばよかったのに。ああ、アブシャロム、アブシャロム。」