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サムエル記2 19 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

サムエル記2 19

¹やがて、「王様はアブシャロム王子のことで悲しんでおられる」という報告が、ヨアブの下に届けられた。

²そのため、その日の勝利の喜びは、悲しみに変ってしまった。王の心のうちを思えば、当然のことであった。

³こうして、民は、勝利の行進をするどころか、敗残兵ででもあるかのように、こっそりと町に帰って来た。

⁵ヨアブは王の部屋へ来て、王に愚痴をこぼした。「王様。私どもは今日勝利を得て、王様や奥方様、王子様、お姫様の命をお救い申し上げましたのに、何か私どもが悪いことでもしたかのようになさっていらっしゃいます。それでは、私どもの立つ瀬がございません。

⁶王様は、敵を愛して、味方を憎んでいらっしゃいます。私どもなどどうなってもよろしいのですね。アブシャロム様が生き残り、私どもが皆死んでしまった方がよかったのでしょう。

⁷もしそうでないなら、そのことをはっきりと王様の言動によってあかしをなさってください。王様御自らお出ましになって、兵隊たちの労をねぎらってください。もしそうしてくださらないのでしたら、王様のために戦った兵隊たちは、一人残らず去って行ってしまうことでしょう。そうなりましたら、ご生涯の中で最悪の事態が起ります。」

⁸王はようやく立ち上がり、町の門の所に座った。そのことが町中に知れ渡ると、人々は続々と王の下にやって来た。

⁹8節：一方、イスラエル軍の方はどうかというと、皆自分の天幕に逃げ帰っていた。そして、彼らはこんなことを話し合っていた。「ダビデ王は、われわれをペリシテ人の手から救い出してくださったお方だ。ところが、王様は、アブシャロム様のために、国外へ逃げて行っておられる。

¹⁰われわれはアブシャロム様を王様として戴いたのに、あえなく戦死してしまわれた。今こそダビデ王をもう一度王様として仰ごうではないか。」

¹¹ダビデ王は、祭司ツァドクとエブヤタルに使いの者を送って、ユダの長老たちに、このようなことを伝えた。「イスラエルの民は皆、余が王宮に戻ることを願っているのに、その方たちは、何をぐずぐずしているのか。

¹²その方たちは、真先にそのことを考えるべき者たちではないのか。」

¹³また、アマサにもこのようなことを伝えた。「今後、余はその方を司令官として取り立てる。臆するには及ばぬぞ。」

¹⁴こうして、ダビデはユダのすべての人を説得したので、彼らは王に、「どうぞ都にご帰還ください」と言い送って来た。

¹⁵そこで、王は帰途に着き、ヨルダン川の所まで来ると、ユダの人々は王を迎えるため、ギルガルに来て、王がヨルダン川を渡るのを助けた。

¹⁶ベニヤミン人ゲラの子で、バフリム出身のシムイも、王を迎えるために駆け付けて来た。

¹⁷彼は千人のベニヤミン人を連れていた。サウル王に仕えたツィバもその十五人の息子と二十人の召使と一緒に、王が渡るヨルダン川に来た。

¹⁸シムイは王とその一族が川を渡るのを助け、王に自分の誠意を知ってもらおうとして、渡し場を渡った。そして、王が渡し場を渡り終った時、その場にひれ伏して、

¹⁹申し上げた。「王様。どうかお赦しください王様がエルサレムから落ちのびて行かれる時、この私は大それたことをしてしまいましたが、どうかすべてを水に流してお忘れください。

²⁰私は自分がどんなにひどい罪を犯したかということをよく知っております。その罪の償いのつもりで、このように真先に王様をお出迎えに上がっております。」

²¹ツェルヤの子アビシャイがそれをさえぎるようにして、言った。「シムイ。お前は主が油を注いでお立てになった王様を呪ったのだぞ。それは、死刑に当るのだ。」

²²ダビデ王は、それをとどめて、こう言った。「アビシャイ。もうよろしい。あのことは、余のことであって、その方とはかかわりの無いことだ。余の裁量に任せるがよい。もうイスラエルの民の中で、だれも殺されることがあってはならぬ。余はイスラエルの王として、このことを宣言する。」

²³そしてシムイに対し、「余はその方を殺しはしないぞ」と言って、保証してやった。

²⁴サウルの孫メフィボシェテも、王を迎えにエルサレムからやって来た。彼は、王がエルサレムから逃れて行った日以来、自分の身の周りのことを放っておいて、王のことを心配していた。

²⁵彼が王を迎えに来たのに出会うと、王は尋ねた。「どうして余と一緒に来てはくださらなかったのですか。」

²⁶メフィボシェテは悲しそうに答えた。「王様。私の召使のツィバに欺かれました。私は足が不自由なものですから、ろばに乗って王様にお伴をしようと思っておりました。

²⁷ところが、ツィバは、私が王様と一緒に行きたくないと言っていると申して、王様にうそを申しました。王様は、そのことについて、どちらの言うことが正しいか、すでにご存じだと思います。

²⁸王様からすれば、私の父の一族は、皆死刑に当る者に過ぎないのですが、私だけは王様が特別にお恵みを下さっています。この上、私は王様に何を要求できましょうか。」

²⁹王は彼に言った。「よく分った。それでは、その方とツィバとで、領地を二分するがよい。」

³⁰メフィボシェテは王に答えた。「王様が無事にご帰還なさいましたら、もうそれだけで私は何もいりません。ツィバに領地を全部やってください。」

³¹ギルアデ人バルジライは、ヨルダン川で王を見送るために、ログリムからヨルダン川までやって来た。

³²バルジライはすでに八十歳になっていたが、大変、裕福で、王がマハナイムに留まっていた間中、王の世話をしていた。

³³王はバルジライに言った。「余と一緒に都へ来る気はないか。なんとか礼をしたいと思っている。王宮で一緒に暮してもらいたい。」

³⁴バルジライは答えた。「王様とご一緒に都へ参りましても、私の余命はいくばくもございません。

³⁵私はもう八十でございます。もう何も分らぬ老人でございます。おいしいごちそうを食べましても、余興の声も、別にどうということはございません。私はただ王様の重荷となるばかりでございます。

³⁶そういうわけでございますから、ヨルダン川をご一緒に渡らせていただきましてから、しばらくの間はご一緒させていただきますが、

³⁷それだけでご勘弁を願いたいと思います。私は住み慣れた所で死にとうございます。ところで、ここにおりますのは、息子のキムハムでございます。キムハムは王様とご一緒に参ります。王様がしたいとお思いのことは、どうぞこのキムハムにしてやってくださいますように。」

³⁸王は言った。「そうか。キムハムが余と一緒に来てくれるか。それならば、キムハムに目を掛けてやろう。」

³⁹こうして、王とその一行はヨルダン川を渡った。王はバルジライに祝福の口付けをし、別れを告げた。こうして、バルジライは自分の家に帰って行った。

⁴⁰王はギルガルへ向って行った。キムハムも王に従って行った。ユダの民全部とイスラエルの民の半数も王と一緒に行った。

⁴¹イスラエルの民は王に抗議をして、こう言った。「ユダの人たちは、どうして自分たちだけで王様を出迎えに行ったのですか。」

⁴²ユダの民はそれに答えた。「どうして、そんなことで腹を立てたりするのか。王様は私たちの部族の出なのだ。王様が何か私たちをえこひいきしたとでも言うのか。」

⁴³しかし、イスラエルの民はなおも抗議し続けた。「私たちはイスラエルの十二部族中十部族もいるのだ。それなのに、私たちをないがしろにするとはけしからん。王様を都に連れ戻そうと最初に言い出したのは、私たちなんだぞ。」しかし、この議論は決着が付かず、ユダもこれに激しく応酬した。