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マタイによるイエス・キリストの福音 27 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

マタイによるイエス・キリストの福音 27

¹夜が明けると、祭司長や民の長老たちから成るユダヤ人議会は、イエスを死刑にする決議をした。

²それから、イエスを縛って、引っ張って行き、総督ピラトに引き渡した。

³その時、イエスを裏切ったユダは、イエスが有罪とされたことを見て、後悔し始め、銀貨三十枚を祭司長や長老たちに返して、

⁴こう言った。「私は罪の無い人の命を売って、罪を犯しました。」しかし彼らは言った。「われわれの知ったことか。それは、お前の事じゃないか。」

⁵それで、ユダは銀貨を神殿の中に投げ捨てて立ち去った。そして、外に出て行き、首をつって死んだ。

⁶祭司長たちは、その銀貨を取って、こう言った。「それは血の代価だから、それを神殿の金庫に入れることはよくない。」

⁷そこで、彼らは決議を行って、陶器師の畑を買い、無縁墓地とした。

⁸そのために、その畑は今日に至るまで「血の畑」と呼ばれている。

⁹その時、主が旧約の預言者ゼカリヤやエレミヤによって語られた預言が成就した。「彼らは、銀貨三十枚を取った。それは値踏みされた人の値段、イスラエルの人々が値踏みしたものである。

¹⁰主が私に命じられたように、陶器師の畑の代金として、彼らはそれを買ったのである。」

¹¹さて、イエスは総督ピラトの前に立たされた。すると、総督はイエスに質問した。「その方は、ユダヤ人の王なのか。」イエスは言われた。「その通りです。」

¹²イエスは祭司長や長老たちの訴えに対して、何一つ答えようとはされなかった。

¹³その時、ピラトはイエスに言った。「その方に対し、これほどまで不利な証言をしているのに、聞えないのか。」

¹⁴それでも、イエスは、総督が非常に不思議に思うほど、どの訴えに対しても一言もお答えにならなかった。

¹⁵ところで、総督は、祭の度ごとに、群衆の望む囚人を一人だけ赦免する習慣があった。

¹⁶ところがその時、バラバという悪名の高い囚人がいた。

¹⁷それで、彼らが集まっていた時、ピラトは言った。「その方たちは、だれを釈放してもらいたいのか。バラバか、それともキリストと言われているイエスか。」

¹⁸ピラトは、彼らがイエスを引き渡したのが、彼らのねたみのためであることを知っていた。

¹⁹ピラトが裁判の席に着いた時、彼の妻が使いを寄越して言わせた。「あの正しい人には、何も関係なさらないでください。私は、昨夜、夢であの人のために、大変苦しみましたから。」

²⁰しかし祭司長や長老たちは、バラバを赦してイエスを死刑にするよう、群衆を説き付けた。

²¹総督は彼らに答えて言った。「その方たちは、二人のうち、どちらを釈放してもらいたいのか。」彼らは、「バラバだ」と言った。

²²ピラトは彼らに言った。「それでは、キリストと言われているイエスはどうしたらよいのか。」みんなは、「十字架に付けろ」と言った。

²³ピラトは言った。「それでは、この男がどんな悪事をしたと言うのか。」しかし、彼らはますます叫んで、「十字架に付けろ」と言った。

²⁴ピラトはどうしようもなく、かえって暴動が起りそうなのを見て、水を取り、群衆の前で手を洗い、この事件に関係しないことを表して、こう言った。「この男の血については、余に責任は無い。その方たちの責任だぞ。」

²⁵すると、民衆は皆答えて言った。「その男の血の責任は、われわれと子孫の上に懸ってもいい。」

²⁶その時、ピラトはイエスの代りにバラバを釈放してやり、イエスをむち打って十字架に付けるために引き渡した。

²⁷それから、総督の兵隊たちは、イエスを官邸に連れて行き、全部隊をイエスの周りに配置した。

²⁸そしてイエスの服を脱がせて、王の着用するような赤い外套を着せ、

²⁹また、いばらで冠を編み、イエスの頭にかぶせ、右の手には王笏をまねた葦を持たせ、その前にひざまずいて見せ、からかって言った。「ユダヤ人の王様。万歳。」

³⁰それから、イエスにつばを掛け、葦を取り上げて、イエスの頭をたたいた。

³¹こんなふうにイエスを愚弄してから、外套をはぎ取って、元の上衣を着せた。そして、十字架に付けるために、イエスを引っ張って行った。

³²彼らが出て行くと、シモンというクレネ人を見付けたので、彼らはこの男に、イエスの十字架を、無理矢理背負わせた。

³³そして、「されこうべ」という意味のゴルゴタと言われる場所に来た時、

³⁴彼らは、イエスに、麻酔薬である苦みを混ぜたぶどう酒を飲ませようとした。これは、死刑の苦しみをいくらかでも和らげてやるために、ユダヤで行われている習慣であった。しかし、イエスはそれをなめただけで、飲もうとはされなかった。

³⁵彼らは、イエスを十字架に付けてから、くじを引いて、その服を分け、

³⁶そこに座って、イエスの見張りをしていた。

³⁷また、イエスの頭の上には、「これはユダヤ人の王イエスである」と書かれた罪状書を付けておいた。

³⁸その時、イエスと一緒に、二人の強盗が、一人は右に、一人は左に十字架に付けられた。

³⁹そこを通って行く者たちは、頭を振りながら、イエスをののしって、

⁴⁰言った。「神殿を壊したら、三日のうちに建てるという人。お前さんが神の子なら、自分を救ってみろ。十字架から下りてみろ。」

⁴¹同じように、祭司長たちも律法学者や長老たちと一緒になって、イエスをあざ笑って言った。

⁴²「ほかの人たちを救っても、自分を救うことができないのか。本当に、イスラエルの王様なら、今、十字架から下りて来い。そうしたら、信じてやろう。

⁴³彼は神様に頼っている。神様の御心なら、今、救ってもらったらいいだろう。自分は神の子だと言ったんだから。」

⁴⁴イエスと一緒に十字架に付けられた強盗どもも、最初のうちは同じようにイエスをののしっていた。

⁴⁵さて、昼の十二時から午後三時まで、全地が真暗闇になった。

⁴⁶午後三時ごろ、イエスは大声で叫んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と言われた。これは、「わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。

⁴⁷すると、そこに立っていたある人々が、これを聞いて、「この人は、エリヤを呼んでいるのではないか」と言った。

⁴⁸また、彼らのうちの一人が、すぐに走り寄って、海綿を取り、それに麻酔薬である酸いぶどう酒を浸して、葦に付け、イエスに飲ませようとした。

⁴⁹ほかの者たちは言った。「エリヤが、本当に助けに来るかどうか、見ていようではないか。」

⁵⁰イエスはもう一度大声で叫んで、ついに息を引き取られた。

⁵¹するとその時、神殿の聖所と至聖所を仕切っていた幕が、上から下まで真二つに裂けた。また地震が起って、岩が裂け、

⁵²墓が開かれ、そこに葬られていた信者たちの体が生き返った。

⁵³そして、イエスの復活の後、墓から出て行って、エルサレムの町に入り、多くの人々に現れた。

⁵⁴ローマの中隊長、および彼と一緒にイエスを見張っていた人々は、地震やいろいろな出来事を見て、非常に恐れ、「この方は、本当に神の子であった」と言った。

⁵⁵また、そこには、多くの女たちが遠くの方から眺めていた。彼女たちは、イエスに仕えるため、ガリラヤから弟子として付いて来た人たちであった。

⁵⁶彼女たちの中には、マグダラのマリヤや、ヤコブとヨセフの母マリヤや、ゼベダイの子供たちの母もいた。

⁵⁷夕暮になった時、ヨセフという名前のアリマタヤ出身の金持の人がやって来た。彼もまた、イエスの弟子であった。

⁵⁸彼はピラトの所に行って、イエスの遺体の下げ渡しを願い出た。そこで、ピラトは引き渡すように命じた。

⁵⁹ヨセフはイエスの遺体を引き取って、清潔な亜麻布に包み、

⁶⁰岩を掘って造った自分の新しい墓に納めた。そして、墓の入口には、大きな石をころがしておいて、彼は帰った。

⁶¹しかし、そこにはまだマグダラのマリヤとほかのマリヤが、墓の方を向いて座っていた。

⁶²さて、次の日は安息日であったが、祭司長やパリサイ派の人たちは、ピラトの所に集まって、

⁶³こう言った。「閣下。あのうそつきが、まだ生きております時、『自分は三日の後に復活する』と言っておりましたのを、思い出しました。

⁶⁴ですから、三日目までは墓の番をするようにお命じになってください。そうでありませんと、弟子たちが来て、死体を盗んで行き、『死人の中から復活した』と民衆に言い触らさないとも限りません。そうなりますと、後のうその方が、前のものより、もっと厄介なことになります。」

⁶⁵ピラトは、「番兵を出してやるから、行って、できるだけ厳重な番をするがよい」と彼らに言った。

⁶⁶そこで、彼らは行って、番兵と一緒に石に封印し、墓の番をした。