Read 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 マルコによるイエス・キリストの福音 9 Bible Online

マルコによるイエス・キリストの福音 9 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

マルコによるイエス・キリストの福音 9

¹イエスは彼らに言われた。「よく言っておきますが、確かに、イスラエルの人々が裁かれるのは、この世の終りの時にではなく、間もなくのことです。その時、わたしが来て、イスラエルの人々を裁きます。またその時、教会が生れ、そこで、神の国の驚くべき力を見るでしょう。」

²それから六日たって、イエスはペテロとヤコブとヨハネの三人だけを連れて、高い山に登って行かれた。そして、彼らの目の前で御姿が変った。

³その服は非常に白く光り、この世のクリーニング屋では、とてもできないほどの白さであった。

⁴すると、旧約の預言者を代表するエリヤと律法を代表するモーセが現れて、イエスと話し合っていた。

⁵ペテロはイエスに向って言った。「先生。私たちがここにいることは、すばらしいことです。私たちは、ここに三つの小屋を造りましょう。あなたのために一つ、モーセのために一つ、エリヤのために一つです。」

⁶実のところ、皆の者たちは、非常に恐れていて、ペテロも何を言ってよいのか分らなかったのである。

⁷その時、雲が起って、彼らを包み、雲の中から声があった。「これは、わたしの愛する子である。彼の言うことを聞きなさい。」

⁸彼らが急いで辺りを見回すと、イエスご自身のほかはだれもいなかった。

⁹山を下りながら、イエスは彼らに命じて言われた。「わたしが死人の中から復活する時までは、見たことを、だれにも話してはいけません。」

¹⁰そこで、彼らはその御言葉を心に留め、死人の中から復活すると言われたことがどういうことなのかと、互いに論じ合った。

¹¹彼らはイエスに尋ねて言った。「律法学者たちは、なぜエリヤがまず来るはずだと言っているのですか。」

¹²イエスは答えられた。「エリヤがまず来て、すべてのものを立て直すのです。それでは、わたしが多くの苦しみを受け、さげすまれると旧約聖書に書かれてあるのは、どうしてなのですか。

¹³しかし、よく聞いておきなさい。エリヤはもう来ています。それなのに、この世の人々は、彼に対して自分たちの好き勝手なことをしました。」

¹⁴彼らが弟子たちの所に来て見ると、大勢の群衆が弟子たちを取り囲み、また、律法学者たちが弟子たちと論じ合っていた。

¹⁵群衆は皆、イエスを見ると非常に驚き、走り寄って来て、あいさつをした。

¹⁶イエスは彼らに、「あなたがたは、弟子たちと何を議論しているのですか」と聞かれた。

¹⁷すると、群衆の一人が、イエスに答えて言った。「先生。聾唖の霊に付かれている私の息子を、先生の所に連れて参りました。

¹⁸その霊が息子に取り付きますと、どこであろうと彼を引き倒します。すると、彼は泡を吹き、歯ぎしりして、体をこわばらせてしまいます。イエス様がお留守なので、お弟子さんにお願いして、霊を追い出していただこうと思ったのですが、お弟子さんには出来ませんでした。」

¹⁹イエスは答えて言われた。「ああ、不信仰な時代だ。わたしはいつまで、あなたがたと一緒にいなければならないのでしょう。いつまで、あなたがたのために辛抱しなければならないのでしょう。その子をわたしの所に連れて来なさい。」

²⁰そこで、人々はイエスの所に、その子を連れて来た。その子がイエスを見ると、霊はすぐに彼を引き付けさせたので、地面に倒れ、泡を吹きながら、ころげ回った。

²¹イエスはその子の父親に尋ねられた。「この子がこのようになってから、もうどのくらいたちますか。」父親は言った。「幼い時からです。

²²この霊は、この子を何度も火の中、水の中に投げ込んで、殺そうとしました。しかし、もし、お出来になるものでしたら、私どもをあわれんで、お助けくださいませんでしょうか。」

²³イエスは彼に言われた。「お出来になるものでしたらなどと言うのか。信じることです。そうしたら、治してあげます。」

²⁴すると、その子の父はすぐに叫んで言った。「信じます。でも、信じきれない私をお助けください。」

²⁵イエスは、群衆が駆け寄って来るのをご覧になり、悪霊をしかって言われた。「聾唖の霊よ。わたしはお前に命じる。この子から出て行け。二度と入ってはいけない。」

²⁶すると、その霊は叫び声を上げ、その子を激しく引き付けさせておいて、出て行った。その子は死人のようになったので、多くの人たちは、その子が死んだのだと言った。

²⁷しかし、イエスはその子の手を取って、起された。すると、その子は立ち上がった。

²⁸イエスが家に入られると、弟子たちはこっそりとイエスに尋ねた。「どうして、私たちは霊を追い出すことができなかったのですか。」

²⁹すると、イエスは言われた。「この種のものは、断食をして祈りに打ち込むのでなければ、決して出来るものではありません。」

³⁰それから、彼らはそこを去り、ガリラヤを通って行った。イエスはほかの人に知られることを望まれなかった。

³¹それは、イエスが弟子たちに教えて、「わたしはやがて人々の手に渡され、彼らに殺されますが、三日の後には復活します」と言っておられたからである。

³²しかし弟子たちは、この御言葉をよく理解できなかったし、また、イエスに聞くことを恐れた。

³³それから、彼らはカペナウムに来た。イエスは家に入ると、弟子たちに質問された。「道々、何を論じていたのですか。」

³⁴彼らは黙っていた。道々、だれが一番偉いかと論じ合っていたからである。

³⁵イエスは座って、十二使徒を呼び、こう言われた。「だれでも人の先に立ちたいと思うなら、みんなのしんがりになり、みんなに仕える者とならなければいけません。」

³⁶それから、イエスは一人の幼子を連れて来て、彼らの真中に立たせ、腕に抱いて、彼らに言われた。

³⁷「だれでも、このようにつまらない幼子を、わたしのために受け入れる人は、わたしを受け入れるのです。また、だれでも、わたしを受け入れる人は、わたしをこの世に遣わされた天のお父様を受け入れるのです。」この当時、幼子は、今日のように、純真無垢を表すものとは考えられておらず、つまらない者と考えられていたのである。

³⁸ヨハネがイエスに言った。「先生。先生のお名前を使って、悪霊を追い出しているのを見ましたが、私たちの仲間ではないので、やめさせました。」

³⁹しかし、イエスは言われた。「やめさせることはありません。わたしの名前を使って、力強い奇蹟を行っている人で、わたしに反対する人はいないでしょう。

⁴⁰わたしに反対しない人は、わたしの味方です。

⁴¹あなたがたがキリストの弟子であるということで、あなたがたに水一杯でも飲ませてくれる人は、確かに、天のお父様の与えてくださる報いを頂くことができます。

⁴²それに反して、わたしを信じている、このように小さな者たちを、一人でも躓かせる者は、大きな罪を犯したことになります。裁かれても仕方がありません。

⁴³ですから、もし人を躓かせるものがあれば、たといそれが自分にとってどんなに高価なものであっても、それを取り除くだけの勇気が必要です。たといそれが手であっても、

⁴⁵足であっても、

⁴⁷目であっても、そうです。永遠に祝福を受ける方が、永遠に呪いを受けるよりは、はるかにましです。

⁴⁸その裁きは、本当に恐ろしいものです。

⁴⁹人は、裁きの火によって、心の中に塩気を付けられなければなりません。そうでないと、人はすぐに腐敗、堕落してしまうからです。

⁵⁰塩はよいものです。しかし、もしその塩が塩気を失ったら、一体何によって、その塩気を取り戻すことができるでしょうか。あなたがた自身のうちに塩気を保っていなさい。このように、自分に対しては厳しくし、同時に、ほかの人とは互いに平和でありなさい。」