Read 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 ルカによるイエス・キリストの福音 2 Bible Online

ルカによるイエス・キリストの福音 2 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

ルカによるイエス・キリストの福音 2

¹そのころ、全ローマ世界の人々の人口調査をせよという勅令が、皇帝アウグストから出た。この勅令に従って、何回か人口調査が行われ、人々は住民登録をさせられた。

²ところで、これはクレニオがシリヤの総督に就任してから最初のものであった。

³それで、ユダヤにおいても、人々は皆、登録をするため、それぞれ自分の本籍地へ向って行った。

⁴そのため、ヨセフも、自分が住んでいたガリラヤの町ナザレから、本籍地であるユダヤのベツレヘムという村へ上って行った。そこは、ダビデの村と呼ばれ、ダビデの血筋に当る人々の本籍地であった。

⁵彼は、今は落ぶれてしまったとは言え、れっきとしたダビデの家系の者であったので、同じくダビデの家系で、すでに身重になっていた妻マリヤと一緒に、登録のため、ベツレヘムへ向った。

⁶ところが、彼らがベツレヘムにやって来ると、もう臨月のマリヤは、そこから動けなくなってしまい、

⁷そこで、男の初子を産んだ。彼らは、有合せの布にくるんで、飼葉おけの中に寝かせた。ベツレヘム中の家々には、登録の人が一杯いて、人の住めるような場所は、もうどこにも無かったのである。

⁸さて、この村の近郊で、羊飼たちが、夜、野宿をしながら、羊の群の番をしていた。

⁹すると、主の使いが現れ、主の栄光が彼らを巡り照らしたので、彼らは非常に恐れた。

¹⁰御使いは彼らに言った。「恐れることはありません。さあ、私は、すべての民に与えられるすばらしい喜びの知らせを持って来たのです。

¹¹今日ダビデの村ベツレヘムで、あなたがたのために、救い主がお生れになりました。この方こそ待望のキリスト様です。

¹²あなたがたは、幼子がみすぼらしい布にくるまって、飼葉おけの中に寝かせてあるのを見るでしょう。あなたがたは、余りに貧弱な格好のキリスト様だと思うかもしれませんが、これが救い主の印なのです。」

¹³すると、たちまち、その御使いと一緒に、多くの天使の軍勢が現れ、神を賛美して言った。

¹⁴「聖い天では、神様に栄光があるように。地上では、御心にかなう人々に平和があるように。」

¹⁵御使いたちが彼らを離れて天に帰って行くと、羊飼たちは、互いに語り合った。「さあ、ベツレヘムに行って、主が私たちに知らせてくださった出来事を見て来ようではないか。」

¹⁶そして、急いで行って、マリヤとヨセフと、飼葉おけの中に寝ておられる幼子を捜し当てた。

¹⁷それを見た時、羊飼たちは、この幼子について、御使いから告げ知らされたことを話した。

¹⁸それを聞いた人たちは皆、羊飼の話したことに驚いた。

¹⁹しかし、マリヤは、これらのことをすべて、心に納めて、思い巡らしていた。

²⁰羊飼たちは、そこで見聞きしたことが、全部、御使いの話した通りであったので、信仰をもって神をあがめ、賛美しながら帰って行った。

²¹八日目に、神の民であることを表す割礼を施す時となったので、胎内に宿る前に御使いが付けた通り、幼子はイエスと名付けられた。

²²それから、モーセの律法による彼らの清めの期間が終った時、両親は幼子を主にささげるために、エルサレムに連れて行った。

²³それは、主の律法の書である出エジプト記に、「初子として生れる男子は、すべて、主にささげられなければならない」と記されている通りである。

²⁴また、同じ主の律法の書であるレビ記には、「山鳩一つがい、または、家鳩のひな二羽」と定められているが、それに従って犠牲をささげるためであった。

²⁵彼らがエルサレムに行くと、その時、シメオンという人がいた。この人は正しい敬虔な人で、救い主の現れるのを待ち望んでいた。また、聖霊に満たされていた。

²⁶さらに、救い主であるキリストを見るまでは、決して死ぬことはないと、聖霊の示しを受けていた。

²⁷この人が御霊に動かされて神殿に入って行くと、幼子イエスを連れた両親が、イエスのために律法の定めていることを行うために入って来たので、

²⁸シメオンは幼子を抱き、神をほめたたえて言った。

²⁹「主よ。満足です。もう思い残すことはありません。

³⁰私の目が今あなたの救い主を見ました。

³¹救い主は、あなたがすべての国民のために備えられたもので、

³²異邦人に御心を示す光です。また、御民イスラエルの光栄です。」

³³父と母は、幼子についてこのように語られたことを聞いて、驚いた。

³⁴シメオンは両親を祝福して、母マリヤに言った。「ご覧なさい。この子は、イスラエルの民を二つに分けてしまいます。ある者は信じて救われ、ある者は信じないで滅ぼされるでしょう。また、必ず反対する者が起るでしょう。

³⁵この子のために、あなたは刀で胸が刺し貫かれるような思いをしなければなりません。そのことは覚悟しなければなりませんぞ。それは、この子の事件によって、人々の心の奥深くにある思いが、はっきり露呈するようになるのです。」

³⁶また、アシェル族のパヌエルの娘で、女預言者のアンナという人がいた。彼女はもうかなり年を取っていた。娘のころ結婚して、七年間、結婚生活をした後、

³⁷未亡人になって、今は八十四歳になっていた。彼女は、いつも神殿にいて、夜も昼も、断食して祈りながら、神に仕えていた。

³⁸イエスと両親が清めのために神殿に来られた時、ちょうど彼女もそこにいて、神に感謝をささげ、救い主を待ち望んでいるイスラエルの人々に、この幼子こそ救い主なのだと語った。

³⁹こうして、両親は、神の律法通りのことをすべて済ませたので、ガリラヤの自分たちの町ナザレに帰った。

⁴⁰幼子は、ますます成長して強くなり、知恵に満ちていった。そして、神の恵みがその上にあった。

⁴¹さて、イエスの両親は、過越の祭には毎年エルサレムに行った。ユダヤでは、十三歳になると、男子は成人式を迎えるので、十二歳までに父親はその子に必要な信仰の教育を済ませておかなければならなかった。

⁴²ちょうどイエスが十二歳になられた時、イエスはこの時も両親と一緒に祭を都で祝うため、エルサレムへ上られた。

⁴³ところが、祭が終り、両親は帰途に着いたのに、少年イエスはエルサレムに留まっておられた。しかし、両親はそれに気付かなかった。

⁴⁴両親は、イエスが大勢の人々に混じって、どこかにいるものと思い、一日の道のりを行ってしまった。それから、姿が見えないので、親族や知人の中を捜し回った。

⁴⁵それでも見付からないので、イエスを捜しながら、エルサレムまで引き返した。

⁴⁶三日たってから、ようやく神殿の中で、イエスがユダヤ教の偉い先生方の中に座って、話を聞いたり、質問したりしておられるのを見付けた。

⁴⁷それを聞いていた人たちは皆、イエスの知恵とその答えに驚嘆していた。

⁴⁸両親はこれを見て驚き、母は言った。「まあ、あなたはどうして私たちに、こんなことをしたのです。ご覧なさい。お父さんも私も、心配して、どんなに捜し回ったか分りませんよ。」

⁴⁹すると、イエスは両親に言われた。「どうしてわたしを捜されたのですか。わたしが天のお父様の家にいるのは、当り前ではありませんか。」

⁵⁰しかし、両親には、イエスの話された言葉の意味が分らなかった。

⁵¹それから、イエスは両親と一緒に、ナザレに下って行かれ、両親に仕えられた。母は、これらのことを皆、心に納めておいた。

⁵²イエスはますます知恵が加わり、体も大きくなり、神と人とに愛された。