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ヨハネによるイエス・キリストの福音 11 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

ヨハネによるイエス・キリストの福音 11

¹エルサレムに近いベタニヤの村にマリヤとマルタという姉妹とその弟ラザロが住んでいた。このラザロが病気になっていた。

²マリヤは、主の御足に高価な香油を塗り、自分の髪の毛でふいた女である。

³マリヤとマルタは、イエスの所に使いをやって、こう言わせた。「主イエス様。あなたが愛しておられるラザロが病気です。」

⁴イエスはこれを聞いて言われた。「この病気は死で終ってしまうものではなく、神の栄光が現されるためのものです。また神の子であるわたしが、これによって栄光を受けるようになります。」

⁵イエスは、マルタとマリヤとラザロを特別に愛しておられたので、

⁶ラザロが病気だということを聞かれても、なお、二日間そこにいて、動こうとはされなかった。

⁷二日たってから、イエスは弟子たちに、「またユダヤの地方へ行ってみよう」と言われた。

⁸弟子たちはそれに反対して言った。「先生、つい二、三日前に、ユダヤの地方で、殺され掛ったのではありませんか。またそこへいらっしゃるのですか。」

⁹イエスは言われた。「昼間の時間は十二時間あります。だれでも、昼間歩けば、躓くことはありません。光があるからです。ちょうどそれと同じように、わたしも、天のお父様から伝道するように、ゆだねられている期間があります。その時には、だれからも妨げられることはありません。

¹⁰しかし、夜歩けば、躓きます。真暗闇だからです。」

¹¹そう言われてから、イエスは弟子たちに話された。「わたしたちの友ラザロは眠っています。ですから、わたしはラザロを起しに行こうと思います。」

¹²すると、弟子たちはイエスがラザロのことをただ眠っているとでも思っているのだと考えて、「主イエス様。眠っているのでしたら、安心です」と言った。

¹³しかし、イエスはラザロがもうすでに死んでしまったことをご存じであり、そのことをこう表現されたのであった。

¹⁴そこで、今度ははっきりと、こう言われた。「ラザロは死にました。

¹⁵わたしは、あなたがたが本当に信じるようになるために、そこにいなかったのが、むしろよかったと思っています。さあ、ラザロの所へ行きましょう。」

¹⁶すると、「双子」というあだ名を付けられたトマスが、ほかの弟子に言った。「私たちも主と一緒に行って死のうではないか。」

¹⁷イエスがベタニヤへ行ってご覧になると、ラザロは死に、墓に葬られてから、もう四日もたっていた。

¹⁸ベタニヤはエルサレムから、ほんの二、三キロの所にあった。

¹⁹ユダヤ人の指導者たちが大勢、マルタとマリヤの家に来て、彼女たちを慰めていた。

²⁰マルタは、イエスが来られたと聞いて、迎えに行ったが、マリヤは家の中にいて出て行かなかった。

²¹マルタは、イエスに不平を言った。「主イエス様。もしすぐにでもここへ来てくださっていたら、ラザロは死ななかったでしょうに。

²²けれども、今でも遅くはありません。イエス様が、天のお父様にお祈りになれば、どんなことでも聞かれますわ。」

²³イエスは彼女に言われた。「あなたの弟ラザロは必ず生き返ります。」

²⁴マルタは言った。「私は、この世の終りの復活の時に、そうなることは存じております。」

²⁵イエスは言われた。「わたしは死人を復活させ、また、死んだ人にもう一度命を与えて、生き返らせることのできる者です。わたしを信じる人はたとい死んでも、再び生きることができます。

²⁶また、わたしを信じる人々は永遠の救いに入れますから、決して滅びることはありません。このことを信じますか。」

²⁷マルタはイエスに言った。「はい、主イエス様。私はあなたが長い間待望してきた神の御子の救い主であると信じております。」

²⁸こう言ってから、帰って行って、妹のマリヤを呼び、「先生がおいでになって、あなたを呼んでいらっしゃるわ」とささやいた。

²⁹マリヤはそれを聞くと、すぐに立ち上がって、イエスの所へ行った。

³⁰イエスは、まだ村の外におられ、マルタが出迎えた所に立っておられた。

³¹マリヤを慰めようとして家に来ていたユダヤ人の指導者たちは、マリヤが急いで出て行くのを見て、彼女は墓へ泣きに行くのだろうと思い、その後に付いて行った。

³²マリヤはイエスのおられる所に来て、お目に掛ると、その足下にひれ伏し、彼女も同じように不平を言った。「主イエス様。もしすぐにでもここへ来てくださっていたら、ラザロは死ななかったでしょうに。」

³³イエスは彼女が泣き、彼女と一緒に来たユダヤ人の指導者たちも泣いているのをご覧になると、一方では人をこの悲惨な死に追いやる悪魔に対して憤りを覚え、また、もう一方では彼らの悲しみに深く心を動かされ、

³⁴こう言われた。「ラザロをどこに葬りましたか。」彼らはイエスに言った。「こちらです。」

³⁵イエスは涙を流された。

³⁶すると、ユダヤ人の指導者たちは言った。「どんなにラザロを愛しておられたことか。」

³⁷しかし、彼らの中にはこう言う者たちもいた。「盲人の目を見えるようにしたあの方でも、ラザロを死なせないでおくことはできなかったのだろうか。」

³⁸イエスは、またも憤りを覚えながら、墓の所に来られた。墓はほら穴で、その入口の所には、石が置かれていて、戸の代りをしていた。

³⁹イエスは厳かに言われた。「その石を取りのけなさい。」すると、マルタは言った。「もう四日もたっていますから、あけたら臭くてたまりません。」

⁴⁰イエスは彼女に言われた。「もしあなたが信じるなら、神様の驚くべき奇蹟を見ることができると言ったではありませんか。」

⁴¹そこで、人々は石を取りのけた。イエスは目を上げて、言われた。「天のお父様。今までずっとわたしの祈りに答えてきてくださいましたことを、感謝いたします。

⁴²わたしは、あなたがいつもわたしの祈りに答えてくださっていることをよく知っておりますが、今わたしの周りにいる人々が、わたしのことをあなたから遣わされて来たのだと信じるようにと願って、このように申し上げております。」

⁴³それから、イエスは大声でラザロに向って言われた。「ラザロ。出て来なさい。」

⁴⁴すると、死んでいたはずのラザロが、葬られた時のように、手にも足にも体にも長い布を巻き付けたまま、墓の中から出て来た。顔も布で包まれていた。イエスはそこにいる人々に言われた。「ほどいてやって、帰らせなさい。」

⁴⁵マリヤの所に来て、イエスがなさったことを見たユダヤ人の指導者たちは、イエスを信じるようになった。

⁴⁶しかし、そのうちの何人かの者は、パリサイ派の人たちの所へ行って、イエスのなさったことを告げた。

⁴⁷そこで、祭司長たちとパリサイ派の人たちは、議会を召集して、こう言った。「あの男が、あんなに沢山の奇蹟を行っているというのに、われわれは何をしているのだ。

⁴⁸このまま放っておいたら、みんなが信じてしまうぞ。それでもいいのか。もしそうなったら、ローマの軍隊がやって来て、われわれを殺し、土地もすっかり取られてしまうようになる。」

⁴⁹しかし、議員の一人で、その年の大祭司であったカヤパはこう言った。「あなたがたは何も分っておられませんな。

⁵⁰一人の人がほかの人に代って死ぬことによって、国民全体が滅びないで済む方が得策だとはお思いになりませんか。」

⁵¹イエスが国民全体に代って死ぬというこの預言は、カヤパが語ったものであったが、それは彼が意識して言ったものではなかった。しかし、神の深い御心がそこに表れていた。

⁵²それは、イエスがユダヤ人のためにだけ死ぬのではなく、全世界に散らされている神の子たちのためにも死に、ついに彼らを一つに集めるという預言であった。

⁵³こうして、この日からユダヤ人の指導者たちは、イエスを殺す計画を立てた。

⁵⁴そのため、イエスはもはや公然とユダヤ人たちの間を歩くことができなくなり、そこから荒野に近い地方のエフライムという町に入り、弟子たちと共にそこに滞在された。

⁵⁵ユダヤ人の過越の祭が間近になったので、多くの人々が田舎からエルサレムに出て来て、身を清めていた。

⁵⁶ユダヤ人の指導者たちはイエスを捜し、神殿の庭に立って、互いに言った。「どうだろう。あのイエスはこの度の過越の祭にここへ来るだろうか。」

⁵⁷祭司長たちやパリサイ派の人たちはイエスを捕えるために、イエスの居所を知っている者は届け出るようにと命令を出していた。