Read 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 ヨハネによるイエス・キリストの福音 12 Bible Online

ヨハネによるイエス・キリストの福音 12 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

ヨハネによるイエス・キリストの福音 12

¹イエスは過越の祭の六日前、つまり十字架上で犠牲の死を遂げられる前の週の金曜日にベタニヤの村に来られた。この村は、前にイエスがラザロを生き返らせた所である。

²イエスのために夕食が用意され、マルタは給仕をしていた。ラザロはイエスと一緒に食卓に着いている人々の中にいた。

³マリヤは、非常に高価で、純粋なナルドの香油三百グラムほどを持って来て、イエスの御足に塗り、それを自分の髪の毛でふいた。すると、香油の香りが家の中に一杯になった。

⁴ところが、弟子の一人で、イエスを裏切ろうとしていたイスカリオテのユダはこう言った。

⁵「どうしてこの香油を売って、沢山のお金にし、それを貧乏な人に施して上げなかったのか。」

⁶彼がこう言ったのは、貧乏な人たちのことを心に掛けていたからではなく、彼はイエスの弟子団の会計係をしており、その中から自分のために使い込んでいたのである。

⁷イエスは、言われた。「この婦人のするままにしておきなさい。マリヤは、どれだけ自覚をしていたかは分りませんが、わたしの葬りの用意をしてくれたのです。

⁸あなたがたはこれからも貧乏な人たちと一緒にいます。しかし、わたしの最後は、もうすぐに来ようとしています。」

⁹イエスがベタニヤに来られたことを知ると、多くのユダヤ人がエルサレムからやって来た。それは、イエスに会うためだけではなく、イエスによって生き返らせていただいたラザロを見るためでもあった。

¹⁰そこで、祭司長たちはラザロを殺してしまおうと相談した。

¹¹それは、多くのユダヤ人が、ラザロのことでユダヤ教から離れ、イエスを救い主と信じるようになったからである。

¹²その翌日、過越の祭に来ていた大勢の人々は、イエスがエルサレムに来られることを聞いて、

¹³しゅろの枝を手に取り、迎えに出て、大声で言った。「万歳。主のお名前によって来られる方に、祝福があるように。イスラエルの王、救い主イエス様に、祝福があるように。」

¹⁴イエスは、ろばの子を見付けて、それに乗られた。それは、旧約聖書のゼカリヤの預言に語られている通りである。

¹⁵「エルサレムの人たち。恐れるな。さあ、あなたの王がおいでになる。ろばの子に乗っておいでになる。」

¹⁶初めのうち、弟子たちには、これが旧約聖書の預言の成就であるということが分らなかった。しかし、イエスが復活されてからは、旧約聖書の多くの預言が皆イエスについて書かれたものであって、イエスによって成就したことを悟るようになった。

¹⁷イエスがラザロを生き返らせた時、それを見ていた大勢の人々は、そのことをみんなに話していた。

¹⁸多くの人たちがイエスを出迎えたのは、イエスがこのような驚くべき奇蹟を行われたことを聞いていたからである。

¹⁹そこで、パリサイ派の人たちは互いに言った。「何もかも駄目だ。世は挙げて、あの男に付いて行ってしまうじゃないか。」

²⁰さて、過越の祭を祝うために、エルサレムに上って来た人々の中に、何人かのギリシャ人がいた。

²¹彼らは、ガリラヤのベツサイダの人であるピリポの所に来て、頼んで言った。「先生。イエス様にお目に掛りたいのですが。」

²²ピリポはアンデレに話し、アンデレとピリポは、イエスの所へ行って、そのことを伝えた。

²³すると、イエスは彼らにこう語られた。「わたしが天の御国へ帰る時が来ました。

²⁴よく言っておきますが、確かに一粒の麦は地に落ちて死ななければ、一粒のままです。しかし、もし死ねば、多くの実を結ぶようになります。わたしも死なずに生きていれば、わたし一人だけです。しかし、もし死ねば、それによって多くの人に新しい命を与えることができます。

²⁵だれでも、自己保身的な人は、かえって大事な命を失ってしまう結果になり、この世でわたしのために、喜んで自己犠牲を払う人は、永遠の祝福を頂くことができます。

²⁶わたしの弟子になりたいのなら、わたしに従って来なさい。わたしに仕えたいと思えば、いつもわたしと一緒にいることが必要です。わたしに仕える人は、天のお父様が祝福してくださいます。

²⁷今わたしの心は騒いでいる。何と言ったらよいのか。」「天のお父様。間もなくそれに立ち向わなければならない十字架の苦しみから、わたしを救い出してください。しかし、このためにこそ、わたしはこの世に来ました。

²⁸天のお父様。どうかあなたがあがめられますように。」その時、天から御声があった。「わたしはすでに栄光を現した。また、もう一度現そう。」

²⁹そこにいた群衆は、その声を聞くと、雷の音だと思った。ほかの人たちは、御使いがイエスに語ったのだと思った。

³⁰イエスは答えて言われた。「この天からの御声は、わたしのためにではなく、あなたがたのためです。

³¹この世の裁かれる時が来たのです。今この世を支配している悪魔は追い出されます。

³²わたしが十字架上で死に、天に上げられると、あなたがた信じる人たちを皆、わたしのもとに引き寄せます。」

³³イエスはご自分がどのような死に方をなさるのかを示して、このように言われたのである。

³⁴すると、群衆はイエスにこう言った。「私たちは、旧約聖書の中で、救い主(キリスト)はいつまでも生きておられると記されていると理解しています。それなのに、どうしてあなたは救い主が十字架上で死ぬなどとおっしやるのですか。その救い主というのは、だれのことですか。」

³⁵イエスは彼らに答えられた。「光であるわたしは、まだしばらくの間、あなたがたと一緒にいます。わたしがまだこの世にいる間に信じて、光の中を歩いていけるようにしなさい。闇になったら、どうしてよいか分らなくなります。

³⁶世の光であるわたしがこの世にいる間、わたしを信じて、光の子供となりなさい。」

³⁷36節：イエスはこれらのことを話されてから、立ち去って、彼らから身を隠された。イエスは、沢山の奇蹟を彼らの目の前で行われたのに、彼らはイエスを救い主とは信じなかった。

³⁸それは、主が預言者イザヤを通してお語りになったことの成就するためであった。すなわち、「主よ。だれが私たちの語ったことを信じましたか。主の力強い奇蹟の御業がなされても、だれが信じたでしょうか。」

³⁹彼らが信じることのできなかったのは、イザヤを通して、主がまた次のように語っておられたからでもある。

⁴⁰「主は彼らの心の目を盲目にされ、彼らの心をかたくなにされた。そこで、彼らは目で見ることができず、心で悟ることができず、悔い改めることも、いやされることもないのである。」

⁴¹イザヤが預言した時、このようにイエスに言及していたのは、救い主の栄光を幻として見ていたからである。

⁴²しかしながら、それでもユダヤ人の中でイエスを信じる者たちが沢山いた。ただ彼らは、パリサイ派の人たちをはばかって、公言しなかった。それは、会堂から追放されるのを恐れたためである。

⁴³彼らは、神からの栄誉よりも、人の栄誉を重んじたのである。

⁴⁴また、イエスは群衆に向って、大声で言われた。「わたしを信じる人は、実はわたしをこの世にお遣わしになった天のお父様を信じるのです。

⁴⁵また、わたしを見ている人は、実はわたしをこの世にお遣わしになった天のお父様を見ているのです。

⁴⁶わたしは光としてこの世に来ました。それは、わたしを信じる人が、闇の中に留まることのないためです。

⁴⁷たといわたしの言うことを聞いて、それを守らない人があっても、わたしはその人を裁きません。わたしがこの世に来たのは、世の人々を裁くためではなく、救うためです。

⁴⁸わたしを受け入れず、わたしの語ったことを退ける者は、だれでもこの世の終りの裁きの日に裁かれます。それは、わたしが語った真理が裁きます。

⁴⁹というのは、わたしは自分勝手に語ったわけではなく、わたしをこの世にお遣わしになった天のお父様がわたしに語るべきことをお示しになったに過ぎないからです。

⁵⁰天のお父様の御教えは、人を救いに導きます。わたしは、その天のお父様の言われたことを、そのまま話しているのです。」