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ヨハネによるイエス・キリストの福音 19 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

ヨハネによるイエス・キリストの福音 19

¹そこで、ピラトはイエスを捕え、むちで打たせた。

²兵隊たちは、いばらで王冠を編んで、イエスの頭にかぶせ、王の着用するような紫の外套を着せ、

³イエスに近寄って来て、「ユダヤ人の王様。万歳」とからかい、その御顔を平手でたたいた。

⁴すると、ピラトは出て行って、ユダヤ人たちに言った。「よく聞いておくのだ。余はこの男をその方たちの所へ連れて行くが、それはこの男に何の罪も無いことを、その方たちに知ってもらうためだぞ。」

⁵イエスは、いばらの王冠と紫の外套を着けたまま、外へ出て来られた。すると、ピラトは彼らに言った。「ほら、この男だ。」

⁶祭司長たちや役人たちは、イエスを見ると、狂わんばかりに叫んで、「十字架に付けろ。十字架に付けろ」と言った。ピラトは彼らに言った。「その方たちが自分の手で十字架に付けたらよかろう。余はこの男に何の罪も認めることはできない。」

⁷彼らは答えた。「私たちの律法では、自分を神の子だと言う者は死刑になるんです。」

⁸ピラトはこの言葉を聞くと、ますます恐れ、

⁹もう一度、官邸に入って、イエスに尋ねた。「その方はどういう素性の者か。」しかし、イエスは何も答えられなかった。

¹⁰そこでピラトは言った。「どうして答えないのか。余は、その方を釈放しようと思えば釈放でき、十字架に付けようと思えばそれもできる。そういう権威を持っているのだ。」

¹¹イエスは答えられた。「どんな人でも、天のお父様から頂くのでなければ、わたしに対して何の権威もありません。ですから、このわたしを引き渡した者の罪は、決して小さくありません。」

¹²これを聞いて、ピラトはイエスを釈放しようと思った。しかし、ユダヤ人の指導者たちは、狂ったように叫んだ。「もしもその男を釈放したら、皇帝陛下に反逆することになりますよ。その男は、自分を王だと言っているんですからね。」

¹³ピラトはその言葉を聞いて、イエスを外へ引き出し、裁きの座と呼ばれる所で、裁判の席に着いた。

¹⁴それは、過越の祭の中の金曜日の午前六時ごろのことであった。ピラトはユダヤ人たちに言った。「さあ、その方たちの王だぞ。」

¹⁵彼らは狂ったように叫んだ。「やっちまえ。十字架に付けろ。」ピラトは彼らに言った。「その方たちの王を、余が十字架に付けてもよいのか。」祭司長たちは答えた。「皇帝陛下以外に、王なんかいない。」

¹⁶そこで、ピラトは、その時イエスを十字架に付けるため、彼らに引き渡した。

¹⁷彼らはイエスを引き取った。イエスはご自分で十字架を背負い、「されこうべ」という意味の場所、「ゴルゴタ」に向って行かれた。

¹⁸彼らは、そこでイエスを十字架に付けた。イエスと一緒に、ほかの二人の者を、一人はイエスの右に、もう一人はイエスの左に、イエスを真中にして十字架に付けた。

¹⁹ピラトは罪状書を書いて、十字架の上に付けた。それには、「ユダヤ人の王ナザレのイエス」と書いてあった。

²⁰イエスが十字架に付けられた場所は、エルサレムのすぐ外にあったので、多くのユダヤ人たちがこの罪状書を読んだ。それは、ヘブル語とラテン語とギリシャ語で書かれていた。

²¹ユダヤ人の祭司長たちがピラトに、「『ユダヤ人の王』とだけ書かないで、『この男はユダヤ人の王と自称していた』と書いてください」と頼んだが、

²²ピラトは、「余がすでに書いた以上、変えるわけにはいかぬ」と答えた。

²³さて、兵隊たちは、イエスを十字架に付けてから、その上着を取り、四人の兵隊にそれぞれ一つずつ当るように四つに分けた。また下着をも取ってみたが、それには縫い目が無く、全部一つにして織ったものであった。

²⁴そこで、彼らは互いに言った。「それは裂かないで、だれのものになるか、くじで決めよう。」それは、旧約聖書の詩篇の、「彼らはわたしの服を分け合い、わたしの下着をくじで決めた」という預言が成就するためであった。

²⁵兵隊たちがそのようなことをしている間、かたわらには、イエスの母マリヤとその妹、クレオパの妻マリヤとマグダラのマリヤなどが立っていた。

²⁶イエスは、母とそのそばに立っている愛弟子ヨハネをご覧になって、マリヤに向い、「お母様。そこにいるのを、息子と思ってください」と言われた。

²⁷それから、ヨハネに向って、「この母をよろしく頼みます」と言われた。これは、ただ単に自分の愛弟子に母マリヤの余生を頼んだだけではなく、新しい神の家族の中に入れられたということを示すものであった。ヨハネはマリヤを自分の家に引き取った。

²⁸その後、イエスは、救いの御業が完了したことを知られ、「わたしは渇く」と言われた。これは、旧約聖書の詩篇の御言葉が成就するためであった。

²⁹そこには、酸いぶどう酒が一杯入っている器が置いてあったので、彼らは、麻酔薬である酸いぶどう酒に海綿を浸し、それを棒の先に付けて、イエスの口もとに差し出した。

³⁰イエスは、酸いぶどう酒をなめられると、「救いの業は完了した」と言われ、頭を垂れて、息を引き取られた。

³¹ユダヤ人の指導者たちは、その次の日が過越の祭の安息日に当っていたので、その日に死体を十字架に付けたままにしておかないようにと、足を折って死を早め、十字架の上から死体を下ろすことにした。そして、そのことをピラトに願い出た。

³²そこで、ローマの兵隊たちがやって来て、イエスと一緒に十字架に付けた左右の者の足を折った。

³³ところが、イエスの所に来ると、すでに息を引き取っておられたので、その足を折らなかった。

³⁴しかし、兵隊は念のためにと、イエスの心臓を槍で突き刺した。すると、血と水がどっと流れ出た。

³⁵これは私が目撃したことである。私は真実をあかししている。あなたがたにも信じてもらいたいからである。

³⁶このようなことがあったのは、「彼の骨は一つも砕かれない」という旧約聖書の預言が成就するためである。

³⁷また、旧約聖書の預言者ゼカリヤによって主が語られた、「彼らは自分たちが突き刺した方を見る」という預言が成就するためでもあった。

³⁸その後、ユダヤ人の指導者たちを恐れて、ひそかにイエスの弟子となっていたアリマタヤのヨセフが、イエスの遺体の下げ渡しをピラトに願い出た。ピラトはそれを許したので、彼は来て、イエスの遺体を十字架から取り下ろした。

³⁹また、以前、夜イエスの所へ来たニコデモも、没薬とアロエを混ぜたものを三十キログラムばかり持って来た。

⁴⁰彼らは、ユダヤ人の埋葬の習慣に従って、イエスの遺体を、香料を塗った亜麻布で巻いた。

⁴¹イエスが十字架に付けられた所には、一つの園があって、そこには、まだだれも葬ったことのない新しい墓があった。

⁴²その翌日はユダヤ人の安息日であったので、墓が近いということもあって、彼らはそこにイエスを葬った。