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ヨハネによるイエス・キリストの福音 4 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

ヨハネによるイエス・キリストの福音 4

¹イエスがヨハネよりも多くの弟子を作り、バプテスマを授けておられることを聞いたパリサイ派の人々は、大変恐怖を感じた。そのことを主が知られると、

²――実際にバプテスマを授けていたのは主イエスご自身ではなく、弟子たちであったが――

³主はパリサイ派の人々の反対を予感され、その時がまだ来ていなかったので、ユダヤ地方を去り、またガリラヤ地方へ行かれた。

⁴この度の旅行では、ユダヤ人が普通通らないサマリヤ地方を通るコースを選ばれた。それには一つの目的があった。

⁵主はサマリヤのスカルという町においでになった。この町は、ヤコブがその子ヨセフに与えた土地の近くにあった。

⁶そこには、ヤコブの井戸と呼ばれた井戸があった。イエスは旅の疲れを覚えて、井戸のそばに座っておられた。時は夕方の六時ごろであった。

⁷すると、一人のサマリヤの女が水を汲みに来た。イエスは、「水を頂けませんか」と言われた。

⁸その時、弟子たちは食物を買いに町へ出掛けて行っていて、ほかにだれもいなかった。

⁹これを聞いたサマリヤの女は、驚いてイエスに言った。「あなたはユダヤ人なのに、どうしてここへおいでになったのですか。それに、サマリヤ人の私に話し掛けられるのですか。そればかりではありません。この女の私にそのようなことをおっしゃるとは、どういうわけですか。」――そのころ、ユダヤ人は、サマリヤ人を汚れた者たちと見なして交際しようとはしなかった。というのは、サマリヤ人はユダヤ人と異邦人の混血であったからである。――

¹⁰イエスは答えて言われた。「もし神様があなたがたに与えてくださるすばらしい賜物のことや、わたしがだれであるかということを知ったなら、今度はあなたの方からわたしに求めて来るはずです。そうすれば、わたしはあなたに命の水を上げましょう。」

¹¹彼女は、イエスの言われたことがよく分らなかった。それでこう答えた。「先生。汲む物を何も持っていらっしゃらないで、どうして水が汲めるのですか。この井戸はとても深いんですよ。その命の水とは、どこにあるんですか。

¹²私たちの先祖のヤコブもその子供たちも家畜も、皆この井戸の水を飲んだんです。先生は、あのヤコブよりもお偉い方なんですか。」

¹³そこで、イエスは深い真理を語られた。「だれでも渇きをとどめようとして、水を飲みます。しかし、このような水は、一度飲んでも、また渇いてしまいます。

¹⁴しかし、わたしが与える水というのは、こんな水ではありません。わたしが与える水は、一度飲んだら、もう決して渇くことのない心の水です。それを心の中に受け入れた人は、その人の心の中でそれが泉となって、永遠の命の水がわき出ます。分りますか。」

¹⁵女は、それでもまだ分らなかった。「先生。そんなに便利な水があるのなら、その水を私にも頂けませんか。そうすれば、もう二度と、嫌な思いをして、ここまで水を汲みに来なくてもよくなりますから。」

¹⁶そこで、イエスは彼女に言われた。「行って、あなたの夫をすぐここへ呼んで来なさい。」

¹⁷女は、けげんな顔をしながら答えた。「私には、夫なんかおりません。」イエスは彼女を見詰めて言われた。「確かにその通り。あなたが正式に結婚した夫は無いですね。

¹⁸でも、あなたは男を五人も替えている。今一緒にいる男も、確かに夫ではない。夫がいないと言ったのは、その通りだ。」

¹⁹女は驚いて、イエスに言った。「先生。あなたは普通のお方じゃありません。モーセが預言しているあの預言者です。

²⁰どうか教えてください。あなたがたユダヤ人は、礼拝の場所がエルサレムだと言っています。しかし、私たちサマリヤ人は、このゲリジム山で礼拝をするのだと言っています。どちらが、正しいのでしょうか。」

²¹イエスは彼女に言われた。「あなたがたがこの山でも、エルサレムでもない方法で、天のお父様を礼拝する時が来ます。

²²確かに、ユダヤ人の礼拝はサマリヤ人の礼拝に勝っていました。しかし、それは本当の救い主が来られる時までの礼拝の仕方です。

²³今は特定の場所で動物の犠牲によってなされる礼拝ではなく、そのような旧約の礼拝が指し示していた、本当の礼拝が行われるのです。それは御霊と御言葉によって天の救い主を礼拝する霊的な礼拝です。天のお父様が求めておられるのは、このように礼拝をする人々です。

²⁴というのは、神様は霊であられますから、その霊であられる神様を礼拝する者も、御霊と真理である御言葉によって礼拝しなければなりません。」

²⁵女はイエスに言った。「私はキリストと呼ばれる救い主が来られることを知っています。その方が来られたら、何もかもすべてのことを教えてくださると思います。」

²⁶イエスは女を見詰めて言われた。「あなたと今話をしているこのわたしが、その救い主です。」

²⁷その時、食物を買いに行っていた弟子たちが帰って来て、主イエスが一人の女と話をしておられるのを不思議に思った。しかし、だれ一人として、「何を話しておられたのですか」とも、「どうしてこの婦人と話しておられるのですか」とも言う者はいなかった。

²⁸人をはばかり、ほかの人が水を汲みに来ない時をねらって井戸へ水を汲みに来ていたこの女は、自分の水がめをそこに置くと、町へ走って行き、だれかれの区別なく、人々にこう言った。

²⁹「さあ、来て見てください。私のしたことを、何もかも言い当てた人がいるんです。もしかしたら、この方がキリスト様かもしれません。」

³⁰それを聞くと、人々は町を出て、イエスのいる所へやって来た。

³¹女が町の方へ行ってしまうと、弟子たちは自分たちが買って来た食物を、主イエスに薦めた。

³²ところが、イエスは彼らに言われた。「わたしには、あなたがたの知らない食物があります。」

³³そこで、弟子たちは互いに言った。「だれかが食べる物を持って来たのだろうか。」

³⁴イエスは彼らに説明された。「わたしをお遣わしになった天のお父様の御心を行い、その御業を成し遂げることが、わたしにとっては食物なのです。

³⁵あなたがたは、『刈り入れ時が来るまでには、まだ四か月もある』と言ってはいませんか。確かに麦の場合はそうです。けれども、人の心に蒔かれた御言葉の種によって芽が出、刈り入れるまでには、後四か月も待つ必要はありません。それどころか、もう心の畑は色づいて、刈り入れるばかりになっています。

³⁶刈り入れる者は、多くの人々を救いに導き入れています。こうして、御言葉の種を蒔く者と魂を刈り入れる者とが、一緒に喜ぶためです。

³⁷こういうわけで、旧約聖書に言われている、『ある者は種を蒔き、ある者は刈り取る』ということわざ通りです。

³⁸わたしは、あなたがたを遣わして、あなたがた自身が労したわけでもないものを刈り取らせます。以前、多くの神の使者たちが御言葉の種を蒔いて行きました。その結果、あなたがたは、回心者を刈り取ることができるようになるのです。」

³⁹さて、その町のサマリヤ人の多くは、あの女が、「あの方は、私のしたことを何もかも言い当てました」と言った言葉によって、イエスを信じた。

⁴⁰そこで、サマリヤ人たちは、イエスのもとに来て、自分たちの所に滞在してくださるようにと頼んだ。そのため、イエスは二日間そこに滞在された。

⁴¹そして、なお多くの人々がイエスの言葉を聞いて信じた。

⁴²しかし、彼らはその女に言った。「私たちは、もうあなたが話してくれたことを聞いて、間接的に信じているのではありません。直接この目で見、この耳で聞いて、この方こそ本当の救い主だと分ったからです。」

⁴³それから二日後に、イエスはこの地を去って、ガリラヤへ行かれた。

⁴⁴イエスはよく、「預言者は自分の故郷では、尊敬されないものだ」と言っておられた。

⁴⁵確かに、イエスがガリラヤへ行かれると、ガリラヤ地方の人たちはイエスを歓迎はした。それは、彼らがエルサレムの過越の祭に行っていたので、イエスが祭の間、エルサレムで行われた奇蹟を見ていたからである。

⁴⁶イエスは、またガリラヤのカナに行かれた。ここは前に水をぶどう酒に変える奇蹟を行われた所である。ところが、そのころ、ヘロデ・アンテパスに仕える王室の役人で、息子が病気で悩んでいる人がカペナウムに住んでいた。

⁴⁷この人は、イエスがユダヤからガリラヤに来られたことを聞いて、イエスの所へ行き、息子の病気を、来て治してくださるようにとお願いした。息子は死にそうな病気であったのである。

⁴⁸そこで、イエスは彼に言われた。「あなたがたは驚くべき奇蹟をわたしがしなければ信じないでしょう。」

⁴⁹すると、その役人はイエスに懇願した。「主イエス様。私どもの子供が死なないうちに、早く来ていただきたいのです。」

⁵⁰それを聞くと、イエスは彼に言われた。「家へお帰りなさい。あなたの子供は治っていますよ。」その人は、イエスの言葉を信じて、帰途に着いた。

⁵¹彼が家へ帰る途中で、しもべたちがやって来るのに出会い、息子がもう治ったことを知らせた。

⁵²そこで、子供が良くなった時刻をしもべたちに尋ねると、「昨日の午後七時ごろ、急に熱が引きました」と答えた。

⁵³それは、イエスが彼に、「あなたの子供は治っていますよ」と言われた時刻と全く一致していることを知って、驚いた。そして、彼も彼の家の者も皆、イエスを信じるようになった。

⁵⁴イエスは、ユダヤを去ってガリラヤに来られてから、ここで第二の奇蹟を行われた。