Read 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 ヨハネによるイエス・キリストの福音 7 Bible Online

ヨハネによるイエス・キリストの福音 7 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

ヨハネによるイエス・キリストの福音 7

¹その後、イエスはガリラヤ地方を巡回しておられた。それは、ユダヤ人の指導者たちがイエスを殺そうとねらっていたので、ユダヤ地方を巡回しようとはされなかった。まだイエスが死ななければならない時は来ていなかったからである。

²時は秋で、ユダヤ人の仮小屋の祭が近付いていた。

³そこで、イエスの弟たちはイエスに言った。「兄さん。今度の仮小屋の祭にもエルサレムへ行き、そこにいる弟子たちに奇蹟を示して、励ましてあげたらいかがですか。

⁴こんな田舎にいたのでは有名にはなれません。有名になるんだったら、なんと言ってもエルサレムへ行かなけりゃ。」

⁵弟たちは、この時イエスが救い主であることを信じてはいなかった。

⁶そこで、イエスは彼らに言われた。「わたしがエルサレムで十字架に掛って、身代りの死を遂げる時はまだ来ていません。わたしのように特別な使命を神様から受けていないあなたがたには、特別な時は無いでしょう。

⁷それは、この世の人々がわたしを憎んでいることによっても分るはずです。わたしが彼らの罪を指摘するからです。けれども、あなたがたは憎まれたことがないではありませんか。

⁸ですから、あなたがたは祭のためにエルサレムへ上って行ったらよいでしょう。しかし、わたしは上っては行きません。わたしが死ぬ時は、まだ来ていないのですから。」

⁹こう言われて、イエスはガリラヤになお留まっておられた。

¹⁰ところが、弟たちが祭のため、エルサレムへ上って行くと、イエスは、目立たぬように、ひそかに上って行かれた。

¹¹ユダヤ人の指導者たちは祭の時に、「あの人はどこにいるか」と言って、イエスを捜し求めていた。

¹²そして、群衆の間には、イエスについて、いろいろな意見があって、ある人は、「善い人ではないか」と言い、またほかの人は、「いや、あれは群衆を惑わしている」と言った。

¹³しかし、ユダヤ人の指導者たちを恐れて、いつもひそひそと話し合っていた。

¹⁴祭の中ごろになった時、イエスは神殿の所へ行って、人々に教え始められた。

¹⁵ユダヤ人の指導者たちは驚いて言った。「この人は、われわれの学校で正式に学んだこともないのに、どうしてこんなに旧約聖書をよく知っているのだろう。」

¹⁶そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「わたしが教えていることは、わたしの考えではなく、わたしをお遣わしになった天のお父様のものです。

¹⁷だれでも、神様の御心を行おうと思う人は、わたしの教えていることが神様からのものか、それともわたし自身の考えに過ぎないのかということが分ります。

¹⁸だれでも、自分の考えを語る人は、自分の栄誉を求めますが、自分を遣わした方の栄光を求める人は、真実であって、その人の言うことにごまかしはありません。

¹⁹モーセが与えた律法をわたしは守っているのに、あなたがたはだれ一人として守ってはいません。それなのに、どうしてわたしを殺そうとするのですか。」

²⁰群衆は答えた。「あなたは悪霊につかれて、頭がおかしくなっている。だれがあなたを殺そうとなんかしているものですか。」

²¹イエスは、彼らに答えて言われた。「わたしは安息日に病人を治す奇蹟をしました。すると、あなたがたは皆驚きました。

²²しかし、あなたがたも安息日に労働をしています。それは、神の民であることを表す割礼です。モーセが割礼を命じたからです。――でも、本当はモーセの時代よりも、さらに昔の族長時代からあります。――それで、あなたがたは、安息日にも割礼をしているのです。

²³生れて八日目が安息日に当っていれば、モーセの律法が破られないようにと言って、安息日であっても、割礼をするでしょう。それなら、わたしが安息日に病人を治したからといって、どうして裁くのですか。

²⁴表面的なことだけで判断を下さないで、物事の本質を正しく見極めなければなりません。」

²⁵そこで、エルサレムのある人たちが言った。「この人は、われわれの指導者たちが殺そうとしている人ではないか。

²⁶この人は公然と語っているのに、どうして何にも言わないのだろう。議員たちは、この人が救い主であることを、本当に知っているのだろうか。

²⁷われわれはこの人がどこの出身か知っている。もし本当の救い主なら、突然現れるはずだから、こんなことはないはずだ。」

²⁸イエスは神殿の庭で教えられた時、大声を張り上げてこう言われた。「あなたがたはわたしがどこの出身であるかを知っていると言っています。確かに、わたしはこの地上に生れ、ある時までこの地上のある所で生活しました。しかし、わたしは天のお父様から遣わされてこの世に来ました。あなたがたは、天のお父様を本当は知らないのです。

²⁹けれども、わたしはよく知っています。わたしは天のお父様の所から来たからです。」

³⁰そこで、人々は怒って、イエスを捕まえようとしたが、だれもイエスに手を掛けようとはしなかった。それは、イエスが捕まえられる時がまだ来ていなかったからである。

³¹けれども、群衆の中の多くの人々は、イエスを信じて、こう言った。「たとい救い主が来られたとしても、この方以上の奇蹟をされるだろうか。」

³²群衆がイエスについて、このようなことをひそひそと話しているのを、パリサイ派の人たちが耳にしたので、祭司長やパリサイ派の人たちは、イエスを捕えようとして、役人たちを遣わした。

³³その時、イエスは言われた。「もう少しの間、わたしはあなたがたと一緒にいて、それから天のお父様のみもとに帰ります。

³⁴あなたがたはわたしを捜しても、わたしは見付かりません。あなたがたは、わたしと一緒に、そこへ行くことはできません。」

³⁵そこで、ユダヤ人たちは互いに言った。「私たちが見付けられないとは、一体どこへ行こうとしているのだろう。外国にいるユダヤ人の所へ行って、外国人に伝道しようというのだろうか。

³⁶『あなたがたはわたしを捜しても、わたしは見付かりません』とか、『あなたがたは、わたしと一緒に、そこへ行くことはできません』と、あの人が言ったのは、どういう意味なのだろうか。」彼らはイエスが天のお父様のみもとに帰ることを理解できなかった。

³⁷仮小屋の祭が最高潮に達する最後の日に、イエスは立って、大声でこう言われた。「だれでも心が渇いている人は、わたしのもとに来て、心の渇きをいやす水を飲みなさい。

³⁸わたしを信じる人は、旧約聖書の預言書で教えられているように、その人の心の奥底から、命の水が川となって流れ出るようになります。」

³⁹これは、イエスを信じる人々が後で受ける御霊のことを言われたのである。それは、イエスが十字架に付けられ、復活、昇天されてから、与えられるのである。

⁴⁰この言葉を聞くと、群衆のうちのある者は、「あの方は、確かにモーセが語っていたあの預言者に相違ない」と言い、

⁴¹またほかの者は、「この方こそ救い主だ」と言い、また別の者は、「まさか救い主がガリラヤから出るはずがない。

⁴²救い主はダビデの子孫から出るのだし、ダビデが生れたベツレヘムの村から出ると、旧約聖書に記されているではないか」と言った。

⁴³こうして、イエスのことについて、群衆の間で意見が分れ、対立が起ってしまった。

⁴⁴その中にはイエスを捕まえようとした者もいたが、だれもイエスに手を掛けようとはしなかった。

⁴⁵それから、役人たちは祭司長やパリサイ派の人たちの下に帰って来た。彼らは役人に言った。「どうしてあの男を引いて来なかったのか。」

⁴⁶役人たちは答えて言った。「あの男は実に驚くべきことを話しています。あんなことを聞くのは初めてです。」

⁴⁷すると、パリサイ派の人たちが言った。「お前たちも惑わされているのだ。

⁴⁸議員やパリサイ派の者で、イエスを信じた者がいるか。

⁴⁹あの連中は律法を知らない無知なやつらではないか。みんな不信心な呪われた連中だ。」

⁵⁰彼らのうちの一人で、いつか夜イエスのもとに来たことのあるニコデモは、彼らに言った。

⁵¹「私たちが重んじている律法には、まずその人から直接に聞き、その人が何をしているのかを調べた上で、判決を下さなければならないと記されておりますが、その点はいかがですかな。」

⁵²一同はニコデモに言った。「貴公もガリラヤの出身でしたかな。調べてご覧なさい。ガリラヤからは、救い主ばかりか、預言者だって一人も出たことはありませんぞ。」

⁵³そして、人々は皆、それぞれ自分の家に帰って行った。