Read 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 初代教会の働き 26 Bible Online

初代教会の働き 26 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

初代教会の働き 26

¹アグリッパ王はパウロに、「その方に言い分があれば、述べるがよいぞ」と言った。そこで、パウロは手を差し伸べ、王に敬意を表して、弁明を始めた。

²「アグリッパ王。私がユダヤ人たちに訴えられているすべてのことについて、今日王様の御前で弁明できますことを、幸いに存じます。

³王様は、ユダヤ人のあらゆる慣習や問題をよく知っておいでになる方だからです。どうか、最後まで、お聞きくださいますように。

⁴さて、私がどういう生れの者で、エルサレムで何をしていたかということは、どんなユダヤ人でも皆知っております。

⁵彼らは私のことは何でも知っておりますから、証言をするつもりなら、私がユダヤ教の最も厳格なパリサイ派として生活してきたと言うことができます。

⁶今、私は、神様が私たちの先祖たちに約束された希望のことで、裁判を受けています。

⁷私たちの十二部族は、夜も昼も熱心に神様を礼拝し、その約束の実現を待ち望んで来たというのに、私は今この希望のことで、ユダヤ人から訴えられています。

⁸神様が死人を復活させてくださるということが、そんなに信じがたいことなのでしょうか。

⁹実は、この私自身も、ナザレのイエス様に対しては、強硬に反対すべきであると考えておりました。

¹⁰それを、ただ心の中に思っていただけでなく、エルサレムでは実行しました。祭司長たちから権限を与えられて、私は多くのクリスチャンを投獄しましたし、彼らが殺される時には、むしろ喜んでおりました。

¹¹また、ユダヤ教の会堂においては、よく彼らを罰しましたが、その時、無理矢理にキリスト様を冒涜することを言わせたりしましたし、彼らに対しては激しい怒りに燃え、国外の町々にまで行って、彼らを迫害もしました。

¹²こういうことをして、ある日、私は祭司長たちから権限を委任されて、ダマスコの町に向い、クリスチャンを迫害しようとして行きますと、

¹³もう少しでダマスコの町に着くという少し手前の所で、真昼だと言うのに、天から太陽の光よりも強い光が差してきて、私たち一行の周りを照らすのです。

¹⁴私たちは皆地に倒れてしまいましたが、その時、声があって、ヘブル語で私にこう言うのが聞えました。『サウロ、サウロ。どうしてわたしを迫害するのか。』私の元の名前はサウロでした。『とげのある棒を蹴っても、ひどい目に遭うだけだよ。』

¹⁵私が、『主よ。一体あなたはどなたですか』と申しますと、その方はこう仰せられました。『わたしは、あなたが迫害しているイエスです。

¹⁶さあ、起き上がって、自分の足で立ちなさい。わたしが今こうして現れたのは、あなたがわたしに出会ったこと、また、わたしがあなたに現れて示そうとしていることについて語り伝える、わたしの働き人、また証人として、あなたを任命するためです。

¹⁷わたしは、ユダヤ人と異邦人の中からあなたを救い出し、彼らの所へわたしの証人として遣わします。

¹⁸それは、彼らの心の目を開き、暗黒の中から光へ、悪魔の支配下から神に立ち帰らせ、わたしを信じて罪の赦しを受け、クリスチャンとして神の国を受け継がせるためです。』

¹⁹王様。そういうわけですから、私はこの神様のお示しに従って、

²⁰まず最初にダマスコにいる人々に、それからエルサレムにいる人々に、そうしてその次に、ユダヤ全土、および異邦人たちに、悔い改めて神様に立ち帰り、悔い改めにふさわしい行いをするようにと、語り続けて参りました。

²¹そうしている時、ユダヤ人たちは私を神殿の境内で捕まえ、殺そうとしたのです。

²²私は、今日まで神様のお助けを頂いて、すべての人に語り伝えて参りました。しかし私は、旧約聖書に預言されていること以外は何も語りませんでした。

²³それは、キリスト様が必ず十字架に掛って苦しみを受けることと、死んでから復活されることで、そのことによって全世界の人々に光をもたらすということです。」

²⁴パウロがキリストの復活のことを語っていると、フェストは大声でどなった。「気でも狂ったのか。博学もとうとう頭にきたな。」

²⁵するとパウロは答えた。「フェスト閣下。気は狂っておりません。私は真理を語っているのですし、まじめな話をしています。

²⁶これらのことは王様がよくご存じのことですから、そのまま申し上げております。これは、決して片隅で起ったことではありませんので、王様のお目に留らなかったものはなかったと信じております。

²⁷王様は預言者の語ったことを信じておられますか。もちろん、信じておられることは、よく存じ上げております。」

²⁸すると、アグリッパ王はパウロに言った。「その方は、いとも簡単に申して、余をもクリスチャンにしようというのか。」

²⁹パウロは言った。「簡単でありましょうと複雑でありましょうと、私が神様に祈っておりますことは、王様だけでなく、今日私の話を聞いておられる方々が皆、この私のように喜びにあふれた者となってくださることです。この鎖につながれることまでとは申しませんが。」

³⁰王と総督とベルニケ、および列席した人々は、立ち上がった。

³¹彼らは退場してから、互いにこう言った。「この男は、死罪や投獄に当るようなことは、何もしていない。」

³²また、アグリッパ王はフェスト総督に言った。「この男は、皇帝陛下に上訴さえしていなければ、釈放されたでしょうなあ。」