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初代教会の働き 7 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

初代教会の働き 7

¹大祭司は、「しかと、その通りか」と尋ねた。

²そこで、ステパノは長い論証を始めた。「皆さん。お聞きください。私たちの先祖のアブラハムがまだメソポタミヤにいた時、栄光の神様が彼に現れて、

³『あなたの故郷から出、親族と別れて、わたしが示す地へ行きなさい』と言われました。

⁴そこで、アブラハムはカルデヤ人の地を出て、カナンへ行きました。そこで父が死ぬと、神様は今のこの地に移住させたのですが、

⁵ここでは、足の踏み場となるほどの土地さえも与えられませんでした。それでも、当時子供の無かった彼に、神様はこの土地を、彼と子孫とに財産として与えると約束されました。

⁶また、神様はこう仰せられました。『子孫は外国へ移住し、そこで四百年間奴隷として虐待される。』

⁷さらに、こうも仰せられました。『彼らを奴隷にする国民を、わたしは裁く。その後、彼らは逃れ、またこの地に帰って来て、ここでわたしを礼拝する。』

⁸その時、神様はその契約の印として割礼の儀式を制定されました。こうして、アブラハムにイサクが生れると、八日目に割礼を施しました。それから、イサクにヤコブが生れ、ヤコブに十二人の子供たちが生れました。これが十二族長です。

⁹この十二人のうち十人の兄たちは弟のヨセフをねたんで、エジプトに売り飛ばしてしまいました。しかし、神様はヨセフと共にいてくださり、

¹⁰あらゆる苦しみから彼を救い出し、エジプトの王の好意を得るようにされ、また、知恵を示す機会をお与えになったので、神様は彼をエジプト全体を治める国務長官とされました。

¹¹すると、エジプトにもカナンにも渡る大ききんが起り、大きな苦しみが襲って来て、私たちの先祖は食物が無くなってしまいました。

¹²しかし、ヤコブは、エジプトには穀物があるということを聞いて、初めにヨセフの兄たちを遣わしました。

¹³二回目にエジプトへ行った時、ヨセフは兄たちに初めて自分の身の上を明かしたので、ヨセフの家族のことがエジプトの王にも分りました。

¹⁴ヨセフは使いをやって、父のヤコブと七十五人の親族一同を招きました。

¹⁵ヤコブはエジプトに下って行き、彼もその子供たちも皆そこで死にました。

¹⁶それから、彼らのなきがらはシケムに運ばれ、かねてアブラハムがシケムのハモルの息子たちから買っておいた墓に葬られました。

¹⁷神様がアブラハムにお与えになった約束の時、つまりエジプトでの奴隷状態から自由にされる時が近付くにつれて、イスラエルの民はエジプト中に増え広がり、

¹⁸ヨセフのことを知らない新しい王朝になるまで続きました。

¹⁹この王は、イスラエル民族に対して策略を巡らして虐待し、その幼子たちを捨てさせる政策を取りました。

²⁰モーセが生れたのは、ちょうどその時でした。モーセは神の御心にかなった愛らしい子で、三か月の間、自分の家に隠されていましたが、

²¹それから捨てられたのを、エジプトの王女が拾い上げて、自分の養子として育てました。

²²ですから、モーセはエジプトの最高の学問を身に着け、有力な指導者となっていきました。

²³四十歳近くになった時、モーセは自分の同胞であるイスラエルの民のことを考えるようになりました。

²⁴イスラエルの民の一人がエジプト人にいじめられているのを見て、その人をかばい、エジプト人を打ち倒して、苦しめられている人の仕返しをしました。

²⁵彼は、神様が自分を遣わしてイスラエルの民を救おうとしておられることを、みんなが理解してくれるものと思っていましたが、だれも理解しませんでした。

²⁶翌日、イスラエル人同士が争っていると、彼はそこへ行って、仲直りをさせようとして、『君たちは同族同士なのに、どうしてお互いに傷つけ合っているのか』と言いますと、

²⁷相手を傷つけていた男が、モーセを押しのけて、こう言いました。『一体だれがあんたをわれわれの指導者にしたって言うんだね。

²⁸昨日エジプト人を殺したように、おれたちをも殺そうというのか。』

²⁹この言葉を聞いて、モーセはミデアンの荒野へ逃げて行き、そこで寄留者となり、結婚して二人の男の子を設けました。

³⁰それから四十年たつと、御使いがシナイ山の荒野で、柴が燃えながら燃え尽きない不思議な光景の中で、モーセに現れました。

³¹その光景を見たモーセは、驚いて、それをもっとよく見ようとして近寄った時、そこで主の御声を聞きました。

³²『わたしは、あなたの父祖の神、アブラハム、イサク、ヤコブの神です。』そのため、モーセは恐れおののいて、それを見る勇気も無くなってしまいました。

³³すると、主は彼にこう仰せられました。『靴を脱ぎなさい。あなたが今立っている所は聖い地です。

³⁴わたしは、確かにエジプトにいるわたしの民が虐待されているのを見ましたし、そのうめき声も聞いたので、彼らを救い出すために降って来たのです。さあ、行きなさい。わたしは、あなたをエジプトに遣わします。』

³⁵イスラエルの民は、『一体だれがあんたをわれわれの指導者にしたって言うのか』と言って拒んだのに、神様は、柴の炎の中でモーセに現れた御使いの手によって、イスラエルの民の指導者としてお遣わしになったのです。

³⁶このモーセが、イスラエルの民をエジプトの地から導き出し、四十年の間、驚くべき奇蹟を行ったその人です。

³⁷またこの人が、イスラエルの民に、『神様は、あなたがたのために、私のような預言者を、あなたがたイスラエルの中からお立てになる』と言ったモーセです。

³⁸このモーセは、シナイ山で、律法を授かり、それをイスラエルの民に与えた人です。

³⁹ところが、私たちの先祖たちは、彼に従おうとはしないで、彼を退け、心の中でエジプトに引かれて、

⁴⁰『私たちを導き返してくれる偶像を造ってください。エジプトの地からここまで導いて来てくれたあのモーセは、もうどうなってしまったのか分りません』とアロンに言いました。

⁴¹そのころ、彼らは金の子牛を造り、その偶像に供え物をささげ、それを楽しんでいました。

⁴²そこで、神様は彼らに背を向けてしまわれ、彼らが天体礼拝をするままにさせてしまわれました。それは、旧約聖書のアモスの預言に記されている通りです。『イスラエルの人々。あなたがたは、荒野にいた四十年間、いけにえの供え物を、わたしにささげたことがあったか。

⁴³あなたがたは、異教の神々を担ぎ回っていた。それらは、あなたがたが拝むために造った偶像ではないか。だから、わたしはあなたがたを、バビロンの彼方へ移してしまう。』

⁴⁴私たちの先祖たちが荒野をさ迷っている時は、持ち運びのできる神殿、つまり会見の天幕がありました。その中に、石で刻んだ十戒が納められていました。この会見の天幕は、モーセが御使いによって示された通りに造ったものでした。

⁴⁵私たちの先祖たちは、この会見の天幕をついにヨシュアの時代になって、約束の地カナンにいる異邦人を追い払い、そこに持って来ました。そして、ダビデ王の時代にまで至りました。

⁴⁶ダビデは神様から祝福を受けたので、恒久的な神殿造営のことを神様に願い出ました。

⁴⁷しかし、神様のための神殿を建てることができたのはソロモンでした。

⁴⁸ところで、神様が人間の手で造った建物などにお住みになるでしょうか。それは、預言者イザヤを通して主が仰せられた通りです。

⁴⁹『天はわたしの王座、地はわたしの足台。あなたがたは、どのような家を、わたしのために建てようとするのか。わたしの休む所とは、どれなのか。

⁵⁰これは皆、わたしが造ったものではないか。』

⁵¹さて、心のかたくなな人たち。あなたがたは、先祖たちと同じように、いつも聖霊に逆らっているではありませんか。

⁵²先祖たちが迫害しなかった預言者が一人でもありましたか。彼らは救い主が来られることを予告した預言者たちを殺しましたが、今やあなたがたは、救い主を裏切り、殺してしまいました。

⁵³あなたがたは一度でも神様の律法を守ったことはありませんでした。」

⁵⁴これを聞いた人々は、煮え繰り返るような思いで、ステパノに向って歯ぎしりした。

⁵⁵しかし、彼は聖霊に満たされて、天を見詰めていると、栄光に輝いた神様とイエス様がそこに立っておられるのを見て、

⁵⁶こう言った。「ああ、天が開けて、イエス様が天のお父様とご一緒におられるのが見えます。」

⁵⁷これを聞いた人々は、大声で叫びながら、耳を覆い、一斉にステパノの所に殺到した。

⁵⁸そして、彼を町の外へ引きずり出し、崖の下へ突き落し、石を投げて殺した。死刑執行人たちは、自分の上着を、サウロという青年の足下に置いていた。

⁵⁹こうして、崖から突き落されたステパノに石を投げ付けていると、ステパノは祈ってこう言った。「主イエス様。私の霊を御手におゆだねいたします。」

⁶⁰そしてひざまずき、最後の力を振りしぼってこう祈った。「主イエス様。この罪の責めを彼らに負わせないでください。」こう言って、彼は静かに死んだ。