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士師記（士師統治記） 16 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

士師記（士師統治記） 16

¹サムソンはペリシテ人の町ガザへ行き、そこで一人の売春婦を見付け、彼女と夜を過した。

²すると、サムソンがここへやって来たといううわさがすぐに広がり、サムソンを捕まえるため、町の門には人が立ち、夜通し厳戒体制が敷かれた。皆口々に、「明け方まで待って、あいつを殺そう」と言っては、サムソンを待ち伏せていた。

³一方サムソンは真夜中まで、ぐっすり寝てから起き上がり、町の門の戸と二本の門柱をつかみ、それを引き抜いて、ヘブロンの向う側にある山頂まで運んで行った。

⁴その後、サムソンはソレクの谷に住んでいたデリラという女を愛した。

⁵すると、ペリシテ人の領主たちがデリラの所に来て、彼女に頼んだ。「サムソンの怪力の秘密を探ってほしい。どうしたらあいつを縛り上げることができるのか、それを知りたいのだ。われわれは、皆一人が銀十三キログラムずつをあなたに上げようと思う。ぜひ、この頼みを聞いてもらいたい。」

⁶そこで、デリラはサムソンに聞いてみた。「あなたの怪力の秘密はどこにあるの。あなたを縛ったりできる人などいるのかしら。」

⁷サムソンはとぼけてこう言った。「そうだな。弓の弦の真新しいのを七本使って縛れば、いくら私でも、どうにもなるまいな。」

⁸それを聞いたペリシテの領主たちは弓の弦の真新しいのを七本持って来たので、彼女はそれでサムソンを縛り上げた。

⁹奥の部屋には、待ち伏せしている者たちをおいておき、「サムソン。ペリシテ人が襲って来たわ」と言った。それを聞いたサムソンは、その弓の弦を、弱い糸のように何の雑作もなく断ち切ってしまった。こうして、彼の怪力の秘密はだれにも知られぬままであった。

¹⁰デリラはサムソンに文句を言った。「あなたは私をだましたのね。どうしたら、あなたを本当に縛れるのか、教えてくださらないの。」

¹¹サムソンはまたとぼけた。「そうだなあ、真新しいロープで縛れば、いくら私でも、どうにもなるまいな。」

¹²そこで、デリラは新しいロープでサムソンを縛り、「サムソン。ペリシテ人が襲って来たわ」と叫んだ。前と同じように、奥の部屋には、待伏せの者たちがいた。しかし、サムソンはそのロープをこともなげに断ち切ってしまった。

¹³デリラは少々怒りっぽい口調で言った。「またも、私をだましたのね。どうしたら、あなたを縛れるのか、本当のことを教えて。」サムソンはまたも、とぼけた。「そうだなあ、私の髪の毛を機織の糸と一緒に織り込んでみたらいいだろう。そうされてしまえば、いくら私でも、身動きはできないからな。」

¹⁴サムソンが熟睡していると、デリラは彼の髪の毛を機織の糸と一緒に織り込んでしまい、「サムソン。ペリシテ人が襲って来たわ」と叫んだ。サムソンは目を覚すと、髪を引っ張り、機を壊してしまった。

¹⁵デリラはサムソンに泣いて訴えた。「あなたは私のことを愛してなんかいないんだわ。だって、今までに三回も私をだまして、本当のことを教えてくれないじゃないの。」

¹⁶こんな訴えを毎日のようにされたので、サムソンもつらくなり、

¹⁷ついに心の中をすべて明かしてしまった。「私の頭には、かみそりを当てたことがないんだ。母親のおなかにいた時から、聖別されたナジル人として育てられてきた。だから、もしも私の髪の毛がそり落されたら、力は無くなって、普通の人と同じになってしまうのだ。」

¹⁸デリラは、サムソンが心の中をすべて明かしたことを知ったので、人をやって、ペリシテ人の領主たちを呼びに行かせた。「今度は大丈夫です。サムソンは心の中をすべて私に明かしてくれました。」彼らはそのことを聞くと、それぞれ手に銀の贈物を持って、やって来た。

¹⁹彼女は自分のひざを枕にしてサムソンを眠らせ、彼が眠っているところを、一人の人に来てもらい、サムソンの髪の毛をそり落させた。こうしてから、彼を苦しめてみたが、前のような力は無くなっていた。

²⁰デリラが、「サムソン。ペリシテ人が襲って来たわ」と大声で言うと、彼は目を覚し、「今度も一ひねりしてやるか」と言ったが、すでに主が彼から離れてしまっておられることに気付いていなかった。

²¹そのため、彼はペリシテ人に捕まえられ、目をえぐり出されて、ガザに引き立てて行かれ、そこで青銅製の足かせを掛けて、牢に入れられた。彼は牢の中で終日臼をひかされていた。

²²しかし、彼の毛は日を追うごとに伸びてきていた。

²³ペリシテ人の領主たちは、彼らの神ダゴンに盛大ないけにえをささげて、お祝をしようとして集まり、こう言った。「われわれの神様は、われわれの敵サムソンを、われわれの手に渡してくださった。」

²⁴こうして、その民もサムソンの哀れな姿を見ては、自分たちの神をほめたたえた。「われわれの神様は、この国を荒らし、われわれの仲間を大勢殺したわれわれの敵を、われわれの手に渡してくださった。」

²⁵いいご機嫌になったころ、「サムソンをここへ連れ出して来い。見世物にしようじゃないか」と言って、サムソンを牢から引き出して来た。そして、みんなで彼をからかった。サムソンは、柱と柱の間に立たされたが、

²⁶目の見えないサムソンの手引をしてくれている若者に、頼んで、「この神殿の屋根を支えている柱に寄り掛らせてくれないか」と言った。

²⁷ダゴンの神殿は、祭に集まった男女でごった返していた。ペリシテ人の領主たちも、その神殿の中にいた。屋上には約三千人の男女がいて、サムソンが何をするのかと面白そうに見ていた。

²⁸サムソンは大声で主に祈った。「主である神様。どうぞ、今、私を御心に留めてください。神様。どうぞ、もう一度、私に力を与えてください。私の目をえぐり出したペリシテ人に報復させてください。」

²⁹祈り終ると、サムソンは、神殿を支えていた二本の柱を、一本は右の手で、もう一本は左の手で抱え、それに全力を掛けて押し、

³⁰「ペリシテ人もろとも死ぬのだ」と言うと、その柱を引き抜いた。神殿は崩れ落ち、その中にいた領主たちも人々もそれに押しつぶされてしまい、多くの人々が死んだ。こうして、サムソンは、彼が生きていた時よりも、死ぬ時に、多くの人々を打ち倒した。

³¹彼の身内の者たちが彼の遺骸を引き取り、ツォルアとエシュタオルの間にある父マノアの墓に葬った。サムソンは、二十年間、士師として、イスラエルの民しどう/を指導した。