Read 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 士師記（士師統治記） 9 Bible Online

士師記（士師統治記） 9 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

士師記（士師統治記） 9

¹さて、エルバアルと呼ばれたギデオンの子アビメレクは、シェケムにいる自分の母の身内の者たちの所に行き、彼らにこう話した。

²「どうかシェケムの人々によく言って聞かせていただきたいのです。『ギデオンの息子七十人が一緒に治めるのがよいのか、私一人で治めるのがよいのか。私はあなたがたと血のつながりがあるということを、よく覚えておいていただきたい。』」

³アビメレクの母の身内の者たちは、彼に代って、このことをシェケムの人々に話すと、彼らは言うまでもなくアビメレクを支持した。

⁴こうして、彼らは、バアル・ベリテの偶像の神殿から銀八百グラムを準備金として渡した。アビメレクは、その金で言うことを聞くごろつきたちを集めた。

⁵それから、アビメレクは彼らを連れて、オフラにある父の家に行き、兄弟たち七十人を一つ所に集めて殺してしまった。しかし、末の弟ヨタムは身を隠して、助かった。

⁶シェケムとベテ・ミロの住民たちは、シェケムにある石の柱のそばの樫の木の所で、アビメレクを王とした。

⁷このことをヨタムが知ると、彼はゲリジム山の頂上に立ち、声を張り上げて、叫んだ。「シェケムの者たち。私の言うことを聞け。そうすれば、神様はあなたがたに聞いてくださるだろう。

⁸ある時、森の木が自分たちの王様を立てることにした。まずオリーブの木に向って、『私たちの王様になってください』と頼んだ。

⁹すると、オリーブの木は、『神様と人を祝福するために使われる油を出すことが、私の務めです。それをやめて、ほかの木の上にそそり立って何になりましょう』と言って、断った。

¹⁰それから、いちじくの木に向って、『私たちの王様になってください』と頼んだ。

¹¹しかし、いちじくの木も、『甘い実を成らせることが、私の務めです。それをやめて、ほかの木の上にそそり立って何になりましょう』と言って、断った。

¹²それから、ぶどうの木に向って、『私たちの王様になってください』と頼んだ。

¹³けれども、ぶどうの木も、『神様と人を喜ばせるおいしいぶどう酒を作り出すことが、私の務めです。それをやめて、ほかの木の上にそそり立って、何になりましょう』と言って、断った。

¹⁴そこで、今度はいばらの木に向って、『私たちの王様になってください』と頼んだ。

¹⁵すると、いばらはこう答えた。『もし真心から私を王にしようと思うのなら、私の陰に難を避けなさいそうでなければ、いばらから火が出て、レバノンの杉の木まで焼き尽してしまう。』

¹⁶さあ、聞こう。アビメレクを王にしたことは真心からであったのか。それが、ギデオンとその家族を懇ろに取り扱ったことになるのか。ギデオンの功績に報いたことになるのか。

¹⁷私の父ギデオンは、あなたがたを命懸けで、ミデアン人から救い出したのに、

¹⁸あなたがたはそれに背いて、ギデオンの息子たち七十人を一つ所で殺し、女奴隷の子アビメレクを自分たちの身内の者だからというので、シェケムの者たちの王とした。

¹⁹これが、ギデオンとその家族に対する真心からの行為であったとしたら、アビメレクもあなたがたも共々喜ぶがよい。

²⁰そうでなかったのなら、アビメレクとあなたがたは、共に滅ぼし合うことになるだろう。」

²¹これだけ言うと、ヨタムはそこから走って逃げ、アビメレクを避けて、ベエルに住み着いた。

²²アビメレクは三年間イスラエルの民を治めた。

²³しかし、神はアビメレクとシェケムの者たちの間にもめ事が起るよう悪霊の働くのを許されたので、シェケムの者たちはアビメレクに反対し始めた。

²⁴そのため、ギデオンの七十人の息子たちを殺したアビメレクと実際に手を下した者たちの上に、裁きが下ることになった。

²⁵シェケムの者たちは、山の頂上に、アビメレクを待ち伏せする者たちを配置した。ところが、彼らはそこを通る者たちを見さかいなく略奪した。そして、この陰謀はアビメレクにも告げられた。

²⁶さて、エベデの子ガアルは、その身内の者たちと一緒に、シェケムに移住したが、シェケムの者たちは、彼を信用した。

²⁷そこで、人々は畑に出て行って、ぶどうを収穫し、その汁を絞り、収穫のお祭をし、自分たちの神殿の中に入って、飲んだり食べたりしていた。

²⁸みんなの酔いが回ったころ、エベデの子ガアルは大声でこう言った。「アビメレクが何だと言うのだ。シェケムのわれわれが、どうしてあんな男に従わなければならないのか。ギデオンの子のアビメレクもその手下のゼブルも、元々はシェケムの先祖であるハモルの一族に仕えていた者たちではないか。それなのに、どうしてわれわれがあんな男にへいこらしなくてはならないのだ。

²⁹おれを王様にしてくれれば、アビメレクなど追い出してやるぞ。そして、アビメレクに言ってやる。『さあ、どこからでも掛って来い』とな。」

³⁰この町の町長であったゼブルは、エベデの子ガアルの言ったことを聞くと、激怒し、

³¹トルマにいるアビメレクの所に使いを送り、こう言わせた。「今、エベデの子ガアルが、その身内の者たちと一緒にシェケムに来ています。そして町の者たちをそそのかして、反旗を翻させようとしています。

³²ですから、夜中に立って、途中で待ち伏せしたらよいでしょう。

³³朝早く町に突入し、急襲するのです。こうして、ガアルとそこにいる者たちを討ち取ることができると思います。」

³⁴そこでアビメレクは、一緒にいた者たちを連れて、夜のうちに発ち、四つの組に分れ、シェケムに向って待ち伏せをした。

³⁵エベデの子ガアルが出て来て、町の門の入口に立った時、アビメレクとその一隊は、待ち伏せしていた所から立ち上がった。

³⁶ガアルは彼らを見ると、ゼブルに言った。「見ろ、山の頂上から大勢の人が駆け下りて来る。」ゼブルは彼に言った。「山の影が人のように見えるだけです。」

³⁷ガアルはまた言った。「いや、あれは山の影ではない。人間だ。山から駆け下りて来る。またメオヌニムの樫の木の方からもやって来る。」

³⁸すると、ゼブルは彼に言った。「『アビメレクが何だというのだ。何でアビメレクに仕えなければならないのだ』とおっしゃいましたね。『どこからでも掛って来い』とも、おっしゃったのではありませんでしたか。さあ、出て行って、戦われたらどうです。」

³⁹そこで、ガアルはシェケムの者たちの先頭に立って出て行き、アビメレクと戦った。

⁴⁰しかし、アビメレクに打ち負かされ、ガアルは逃げ出し、負傷者が続出して、町の門の所まで続いた。

⁴¹アビメレクはアルマに留まったが、ゼブルは、ガアルとその一族を追い払って、シェケムに住ませなかった。

⁴²翌日、シェケムの住民は再起をはかり、野に出掛けて行った。そのことをアビメレクに通報する者があったので、

⁴³アビメレクは兵を率いて出掛けた。それを三組に分け、野で待ち伏せしていた。すると、シェケムの民が町から出て来たので、彼らを襲撃した。

⁴⁴アビメレクと一組の者たちはすぐに町の門の所をかため、町に出入りできないようにしておき、後の二組が彼らを襲って、殺した。

⁴⁵アビメレクはその日一日中、町を襲撃し、そこの住民を殺し、町を破壊して塩をまき、永久に廃墟になることを示した。

⁴⁶シェケムのやぐらにいた人々は、これを聞いて、エル・ベリテの神殿の地下室に入って行った。

⁴⁷シェケムのやぐらにいた者たちが皆地下室に入ったことが、アビメレクに通報されると、

⁴⁸アビメレクは、一緒にいた者たちを率いて、ツァルモン山に登り、手に斧を持って、木の枝を切り、それを束ねて背負うと、みんなにも同じことをするように命じた。

⁴⁹一緒にいた者たちも木の枝を切って、それを束ねたものを背負い、地下室の所へ運び、それに火を付けた。そのため、地下室に逃れたシェケムの人々、男女合せて一千人が皆焼け死んでしまった。

⁵⁰それから、アビメレクはテベツに行き、テベツを攻め落した。

⁵¹しかし、町の中に、まだ一つ堅固なやぐらがあって、この町の者たちが逃げ込み、そこに立てこもった。

⁵²そこで、アビメレクはやぐらに近付き、やぐらの戸を火で焼こうとした。

⁵³その時、一人の女がアビメレクの頭に、ひき臼の上石を投げ付けて、頭蓋骨を砕いた。

⁵⁴アビメレクは自分の武器を持つ若者を急いで呼び、「さあ、刀で殺してくれ。女に殺されたとは言われたくないからな。」それで、若者の手によって、彼は殺された。

⁵⁵イスラエル人はアビメレクが死んだのを知ると、散り散りになり、家に帰って行った。

⁵⁶こうして、神は、アビメレクが彼の兄弟七十人を殺した悪の報いをなさった。

⁵⁷神は、またシェケムの者たちが行った悪の報いを、彼らに与えられた。そして、ギデオンの子ヨタムが、アビメレクとその一派は滅びると預言した通りに、彼らは滅んでしまった。