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サムエル記1 1 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

サムエル記1 1

¹エフライムの山地のラマタイム・ツォフィムに、エルカナという名前の人がいた。彼の父は、エフライムの人エロハムで、順次さかのぼっていくと、エリフ、トフ、ツフである。

²エルカナには、どういうわけか、ハンナとペニンナという二人の妻がいた。ペニンナには子供があったが、ハンナには子供が無かった。

³彼は、家族共々毎年、自分の町からシロに行って、そこで天地万物の主であるお方を礼拝し、いけにえをささげていた。当時の祭司は、エリの二人の息子ホフニとピネハスであった。

⁴いけにえをささげると、エルカナは、妻のペニンナとその子供たちに、それぞれ贈物を与え、

⁵ハンナにも贈物を与えた。彼はハンナを愛していたが、彼女は子供がいない寂しさをどうすることもできなかった。

⁶ペニンナはハンナに好意を持っておらず、彼女に子供がいないことについて、あれこれと嫌がらせをしていた。

⁷主を礼拝しに行く時、ペニンナは毎年ハンナをいじめていたので、ハンナは泣いて食事をしなかった。

⁸夫のエルカナはハンナを慰めた。「ハンナ。どうして食事をしないで泣いてばかりいるのだ。子供がいなくても、私がいるではないか。」

⁹シロでの食事が終って、ハンナは立ち上がり、主の天幕の方へ行った。祭司エリは、主の天幕の柱の近くの席に座っていた。

¹⁰ハンナは深い悲しみに襲われて、泣きながら祈った。

¹¹「天地万物の主よ。あなたがこのはしための悩みを顧みてくださり、男の子をお授けくださいますなら、私はその子を一生涯あなたにおささげいたします。その子の頭の毛を切ることがなく、聖別されたナジル人といたします。」

¹²ハンナが主の前で長く祈っている間中、エリはハンナの口もとを見ていた。

¹³ハンナは声を出さないで祈っていたので、唇が動くだけで、その声は聞えなかった。それで、エリは彼女が酔っぱらっているのではないかと思い、

¹⁴こう言った。「いつまで酔っぱらっているのか。早く酔いからさめなさい。」

¹⁵ハンナはそれを聞くと、「とんでもございません。祭司様。私は酔っぱらってなどおりません。お酒など飲まない女でございます。ただ心に悩みがございますので、主の前にその悩みを申し上げておりました。

¹⁶どうぞ酒飲みの女だなどとはお思いにならないでください。私は、心の中の悩みを主に申し上げ、祈っておりました。」

¹⁷エリはそれに対して、こう言った。「よく分った。イスラエルの神様が、あなたの願いをかなえてくださるように。」

¹⁸ハンナは、「その通りになりますように」と答えた。それから、帰って食事をした。この時以来、彼女の顔は、もはや悲しげではなくなった。

¹⁹翌朝早く、彼らは主を礼拝し、ラマにある自分たちの家に帰って行った。エルカナはハンナと夫婦の生活をした。主が彼女を顧みてくださったので、

²⁰彼女に男の子が生れた。「神様が聞いてくださった」という意味で、その子にはサムエルという名前を付けた。

²¹翌年、夫のエルカナは家族そろって礼拝をするためシロへ行こうとしたが、

²²ハンナは、「この子が乳離れしましたら、私がこの子を連れて主の天幕に参ります。そして、いっまでも主の天幕にお預けしようと思います」と言って、一緒に行かなかった。

²³夫のエルカナは優しくハンナに語った。「よいと思うようにしなさい。その子が乳離れするまで家にいたらよい。主がお語りになった通りになるようにお祈りしよう。」こうして、ハンナはその子が乳離れするまで家に留まっていた。

²⁴その子が乳離れすると、ハンナはいけにえとして雄牛三頭、小麦粉二十二リットル、皮袋入りのぶどう酒を携えて、その子と一緒にシロにある主の天幕に行った。その子はまだ幼かった。

²⁵雄牛一頭のいけにえをささげると、その子を祭司エリの所に連れて行った。

²⁶ハンナはエリに申し出た。「祭司様。覚えておいでになりますか。私は以前ここで祭司様のおそば近くに立って祈っていた女でございます。

²⁷私はこの子のために祈りました。主はその祈りを聞いてくださいました。

²⁸それで、私も今その時の誓いを果そうとしています。この子を一生涯主におささげいたします。」こうして、ハンナはそこで主を礼拝した。