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サムエル記1 17 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

サムエル記1 17

¹さて、ペリシテ人は戦うために軍隊を召集した。そして、ユダのソコに集まって、ソコとアゼカとの間にあるエフェス・ダミムに陣取った。

²一方、サウルはイスラエル軍を召集し、エラの谷に陣取って、ペリシテ軍を迎え撃つために、陣容を整えた。

³ペリシテ軍は向うの山の上に陣を敷き、イスラエル軍はこちらの山の上に陣を敷き、谷をへだてて、にらみ合っていた。

⁴すると、ペリシテ軍の陣営からガテのゴリアテという身長が三メートルもある大男が出て来た。

⁵その頭には、青銅のかぶとをかぶり、六十キロもある青銅のよろいで身を固め、

⁶足には青銅のすね当を着け、肩には、青銅の投槍を背負っていた。

⁷その投槍の柄は機織の巻棒のように太く、その穂先は、七キロもある鉄が付いていた。彼の前には、盾を持つ男が大盾を持って歩いていた。

⁸ゴリアテは仁王立ちになり、イスラエル軍の陣地に向い、大声を上げて、こう言った。「われこそはガテのペリシテ人ゴリアテなり。サウルの家来の中からだれか一人、勇気のある者は出て来い。

⁹おれと一騎討ちをする勇気のある者は、ここでおれと勝負をし、それによって全軍の勝敗を決めたい。もしおれを打ち倒すことができれば、全ペリシテ人はお前たちの奴隷となろう。しかし、おれが勝った時には、お前たちは全員おれたちの奴隷となるのだ。」

¹⁰彼は戦場に響き渡る声でそう言うと、さらにもう一言付け加えた。「今日こそ、目にもの見せてくれるぞ。さあ、だれでもよい。出て来い。」

¹¹サウルもイスラエル軍も、彼の言うのを聞くと、すっかり恐れをなしてしまった。

¹²ところで、ダビデは、ユダのベツレヘムに住むエフラテ人エッサイの子で、彼には七人の兄がいた。エッサイはこのころすっかり年を取っていた。

¹³エッサイの息子たちのうち、上の三人までは、サウル王に従って、この戦いに従軍していた。その三人というのは、長男エリアブと、次男アビナダブと、三男シャマであった。

¹⁴ダビデは末っ子で、上の三人だけが従軍していた。

¹⁵ダビデは、ベツレヘムで父の羊の世話をしていたので、サウルの所だけにいることができず、その間を行ったり来たりしていた。

¹⁶例のゴリアテは、四十日の間、朝早くと夕暮の二回、出て来ては大声で叫んでいた。

¹⁷ある日、エッサイは息子のダビデに用を言い付けた。「さあ、兄さんたちに食糧を届けて来なさい。

¹⁸それに、十個のチーズは、部隊長に差し上げて、兄さんたちの様子を聞いて来なさい。そして、元気だという証拠を何かもらって来るように。

¹⁹サウル王の軍隊は、今のエラの谷でペリシテ軍と戦っている。」

²⁰ダビデは朝早く起きて、羊を番人に預け、父に言い付けられた通り、食糧を持って出掛けた。彼が陣地にやって来ると、イスラエル軍はときの声を上げて出陣するところであった。

²¹イスラエル軍とペリシテ軍とは向い合って陣を敷いていた。

²²ダビデは、持って来た食糧を、ほかの人に預け、陣地に向って走り出し、兄たちの様子を見に行った。

²³ダビデが兄たちと話をしていると、ちょうどその時、ガテのペリシテ人ゴリアテが、ペリシテ軍の陣地から出て来て、いつもと同じ言葉で挑戦して来た。ダビデは初めてその声を聞いた。

²⁴イスラエル軍の者たちは、その大男を見ると、おじけづいて、後ずさりをするほどであった。

²⁵彼らは互いに言った。「あの大男を見たか。おれたちに挑戦しているぞ。あいつを倒す者があれば、王様は何でも与えるということだ。王女様と結婚させてもらえる上、一族は税金を免除されるそうだ。」

²⁶これを聞くと、ダビデは、そばに立っている人たちに尋ねた。「あのペリシテ人を打ち倒して、イスラエルの名誉を打ち建てたら、何が頂けるのですか。あの神様を知らないペリシテ人は何者ですか。生きている本当の神様の軍隊を侮るとは、何事だ。」

²⁷彼らは、先に話し合っていたのと同じように答えた。

²⁸兄のエリアブは、ダビデがそこで話しているのを聞き、怒り出した。「お前は、ここへ何をしにやって来たのだ。お前が世話をしている羊はどうした。戦いが見たくて、自分の仕事をいいかげんにしたまま、ここへやって来たのだろう。とんでもないやつだ。」

²⁹ダビデは答えた。「私が何をしたというのですか。私がしゃべっては、いけないのですか。」

³⁰ダビデはほかの人の所へ行って、先に尋ねたことと同じことを聞いた。すると、やはり同じ答えが返ってきた。

³¹ダビデが言ったことを聞いた人々が、それをサウルに伝えると、サウルはダビデを呼びにやった。

³²呼ばれたダビデが、「あの大男のことなど気にすることはありません。この私が行って、決着を付けて参りましょう」と言うと、

³³サウルは言った。「その方は無理だ。あの大男と戦えるほどの者ではない。あいつは鍛え抜いた軍人だが、その方はまだ子供ではないか。」

³⁴ダビデはサウルに申し上げた。「確かに私はまだ一人前ではありませんので、父の羊の世話をしております。しかし、ライオンや熊が来て、羊を取って行く時には、

³⁵その後を追って行って、打ち殺し、その口から羊を救い出すのです。もし私に襲い掛って来る時には、ひげをつかんで、打ち殺してしまいます。

³⁶私は今までにライオンでも熊でも打ち殺してきました。あの神様を知らないペリシテ人も、ライオンや熊のようにやっつけてしまいます。生きておられる本当の神様の軍隊を侮ったのですから。

³⁷ライオンや熊から私を救い出してくださった主は、あのペリシテ人の手からも私をきっと救い出してくださいます。」サウルはそれを聞くと、「よし、行け。主がその方を助けてくださるように」と言った。

³⁸サウルはダビデに青銅製の自分のよろいとかぶとを取り出し、着させた。

³⁹ダビデはさらにサウルの刀を持って、その辺りを歩いてみた。少し歩いてから、ダビデはサウルに、「こんなものを身に着けていたのでは自由がありません」と言って、さっさと脱いでしまった。

⁴⁰そして、自分のいつも持っている羊飼の杖を手に取り、川から拾ってきた五つのなめらかな石を小袋の中に入れ、石投げを持って、あのペリシテ人に近付いて行った。

⁴¹ペリシテ人の大男は、大盾を持つ男を先に立てて、ダビデの方に、ゆっくりと近寄って来た。

⁴²彼は辺りを見回し、相手として出て来たダビデがまだ紅顔の美少年であったので、せせら笑った。

⁴³「杖なんか持って出て来て、おれ様を犬とでも思っているのか」と大声でどなり、自分の神の名前を使って、ダビデを呪った。

⁴⁴「さあ、来い。お前の肉を、鳥や獣にくれてやるぞ。」

⁴⁵ダビデは毅然としてこれに答えた。「お前は、刀と槍で私に向って来るが、私は天地万物の主でいらっしゃり、お前がばかにしたイスラエルの神様の力で立ち向うのだ。

⁴⁶今日主はお前を私の手に渡してくださる。私はお前を倒し、お前たちのしかばねを、鳥や獣に与えてやる。こうして、イスラエルに神様がおられることを、全世界に知らせるのだ。

⁴⁷また、主は人間の作った武器などを使わなくても救うことがおできになることを知らせるのだ。この戦いは主の戦いだ。主が戦って勝利を与えてくださる。」

⁴⁸ペリシテ人の大男は、立ち上がり、ダビデを迎え撃とうとして近寄って来た。ダビデも機敏に行動し、ペリシテ人と向い合った。

⁴⁹ダビデは小袋の中から一つの石を取り出すと、石投げを使って、その石を投げた。すると、その石はペリシテ人の額に当り、食い込んだ。彼はそこでどうと倒れた。

⁵⁰ダビデは石投げを使い、一つの石を投げて、ペリシテ人の大男を倒した。ダビデは刀を使わずに彼を打ち倒してしまった。

⁵¹彼は走り寄り、ペリシテ人の大男の上にまたがり、ペリシテ人の腰にあった刀を抜き、とどめを刺して首をはねた。これを見ると、ペリシテ軍の陣営は一斉に逃げ始めた。

⁵²イスラエルとユダの連合軍は、ときの声を上げて追撃し、ガテの入口とエクロンの門まで追い詰めた。それで、ペリシテ軍の多くは、この追撃戦で殺された。

⁵³追撃戦を終えて引き返すと、イスラエル軍はペリシテ軍の陣営であった所へ行き、多くの物を戦利品として獲得した。

⁵⁴ダビデは、ゴリアテの首を取り、エルサレムに持ち帰った。そして、ゴリアテの武具は、自分の天幕に保管した。

⁵⁵サウルは、ダビデがゴリアテと一騎討ちをするために出て行くのを見た時、司令官のアブネルに尋ねた。「アブネル。あの若者はどういう素姓の者だ。」アブネルは彼のことを知らなかった。

⁵⁶王はそれでは満足せず、「どこの家の者か調べてみろ」と命じた。

⁵⁷ダビデがゴリアテを倒し、その首を持って引き揚げて来た時、アブネルは彼をサウル王の所に連れて来た。

⁵⁸サウルはダビデに尋ねた。「よくやった。ところで、その方の父親はだれだ。」ダビデは答えた。「私の父はベツレヘムに住むエッサイと申す者です。」