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サムエル記1 25 - 現代訳聖書, Modern Japanese Bible, 1983 bible

サムエル記1 25

¹サムエルが死ぬと、イスラエルの民は全員集まって、彼のために悲しみ、その遺骸をラマの彼の屋敷内に葬った。

²1節：ダビデはそこを立って、パランの荒野に下って行った。マオンには一人の人がおり、彼はカルメル村で事業をしており、非常に裕福であった。彼は羊三千頭、山羊千頭を持っていた。ある日のこと、彼はカルメルで羊の毛の刈り取りのお祝をしていた。

³彼の名前はナバルと言い、妻の名はアビガイルと言った。妻は才色兼備の婦人であったが、夫は頑迷で、素行もよくなかった。彼はカレブの子孫であった。

⁴ダビデは、ナバルが羊の毛の刈り取りのお祝をしていることを聞き、

⁵十人の若者を遣わそうとし、遣わすに当って、こう言った。「カルメル村のナバルの所に行って、私から来たことを告げなさい。

⁶そして、こう言いなさい。『今日は。皆さんに平安があるように。

⁷私どもは今、皆さんが羊の毛の刈り取りのお祝をしているのを聞きました。以前お宅の羊飼たちと一緒にいたことがありましたが、私どもは何もご迷惑を掛けたことはありませんし、このカルメル村にいた時も、何も悪いことをしたことはありません。

⁸そのことは、お宅の若い衆にお聞きくだされば、お分りのことと思います。実はわずかばかりのものが頂きたくて、主人のダビデが私どもをここに寄越したのです。ちょうどお祝の時でもあり、何か頂けませんでしょうか。』」

⁹ダビデの若者たちは、言われた通りのことを、ダビデの使いとして話した。

¹⁰ところが、ナバルは彼らにこう答えた。「ダビデとは一体だれだ。エッサイの子だか何だか知らないが、このごろでは、主人の下から逃げ出す奴隷が沢山いる。そいつもそうなのじゃないのか。

¹¹私のパンや水、また羊の毛の刈り取りのお祝の肉を、どこから来たのかも分らないようなやつに、くれてやらなければならない義理がどこにあるんだ。」

¹²それで、ダビデの所から遣わされて来た若者たちは、元の道を引き返し、ダビデの所に戻って来て、一部始終を皆、報告した。

¹³すると、ダビデは配下の者たちに言った。「それぞれ自分の刀を用意せよ。」こうして、ダビデは刀を身に着けた者たち四百人ほどを引き連れて、カルメル村に行った。二百人は荷物の番をしていた。

¹⁴一方、ナバルの下男の一人がナバルの妻アビガイルに一部始終を話していた。「ダビデ様が、ご主人様にあいさつをするために、使いの者たちを寄越して来られた時、ご主人様は、彼らを散々ののしりました。

¹⁵ダビデ様に仕えている人たちは、私どもに対して皆良くしてくださったのです。私どもに悪いことをしたこともございませんし、一緒に野原で働いていた時も、何も迷惑を受けたことはございません。

¹⁶私どもが一緒に羊を飼っていた時は、昼も夜も私どもを守ってくださいました。

¹⁷どうすればよろしいか、よくお考えになってください。災は、ご主人様ばかりか、ご一家にも及ぶことは必至でございます。ご主人様は、頑固なお方ですから、だれもおいさめできません。」

¹⁸そこで、アビガイルは急いでパン二百個、皮袋に入ったぶどう酒二袋、料理した羊五頭、妙り麦三十七リットル、干ぶどう百房、干いちじく二百個を取って、これをろばに載せ、

¹⁹若者たちに命じて言った。「さあ、私の前にお行き。私はお前たちの後に付いて行きますから。」このことは、夫ナバルには何も言わなかった。

²⁰彼女がろばに乗って山道を下って来ると、ちょうどダビデとその配下の者たちがやって来るのに出会った。

²¹ダビデは、道々、配下の者たちにこう話してきた。「私が荒野で、あの男の持物を守ってやったので、持物を失わないですんだのに、それは全く無駄なことだった。あの男は恩を仇で返した。

²²私は、神様に掛けて誓うが、明日の朝までに一人でも生かしておくようなことはしない。」

²³アビガイルは、ダビデの姿を見ると、すぐにろばから下り、ダビデの前で地面にひれ伏した。

²⁴「この度のことは、私がその責めを負わなければなりません。どうか私の申し上げますことを、お聞きくださいますように。

²⁵夫のナバルは愚かな者でございまして、その名前の通りでございます。どうぞ夫の申しましたことをお赦しくださいますように。私は、お使いがおいでになりましたことも存じませんでした。

²⁶どうぞ血を流すことはおやめくださいますように。主は生きていらっしゃいます。ですから、夫のように愚かなことをする者は、主が罰を加えてくださいます。

²⁷私が今持って参りましたこの贈物を、どうかお受け取りくださいますように。

²⁸また、私の手落ちにつきましても、どうぞお赦しくださいますように。主は必ずダビデ様のために、王国を堅くお建てになりましょう。ダビデ様は、主の戦いを戦っておいでなのですから、災の起ってくるわけがございません。

²⁹たとい、お命をねらう者がおりましょうとも、主である神様が守っていてくださいますから、命をねらう者が傷つくばかりでございます。

³⁰主がダビデ様について約束してくださったことを、ことごとく成し遂げ、イスラエルの王様におなりになった時、

³¹いたずらに血を流されたのでは、王様に傷が付いてしまいます。主がダビデ様を王様になさった時には、どうかこの私をお覚えくださいませ。」

³²ダビデはアビガイルに言った。「主である神様は、本当にすばらしいお方だ。今日、あなたを私に会わせるために、ここに送ってくださった。

³³あなたは立派な良識を持った婦人だ。あなたの言葉によって、私は血を流す罪を犯さないで済んだ。見上げた婦人だ。

³⁴イスラエルの主である神様がこのようにさせてくださったのだ。もしあなたが急いで私の所に来てくれなかったら、私は確かにナバルに恐ろしいことをしていただろう。」

³⁵ダビデは、アビガイルが持って来た物を、彼女の手から受け取って、こう言った。「安心して、お帰りなさい。私は、あなたの言葉をすべて聞き入れました。」

³⁶アビガイルがナバルの所に帰って来ると、ちょうどナバルは自分の家で豪勢な宴会を開いていた。ナバルは酔っぱらって、上きげんになっていたので、アビガイルは翌日になるまで、何も言わなかった。

³⁷朝になって、ナバルの酔いがさめた時、妻がすべてのことを彼に話すと、彼は色を失って、黙ってしまった。

³⁸十日ほどたって、主がナバルを打たれたので、彼は卒倒して死んだ。

³⁹ダビデは、ナバルが死んだことを聞いて、こう言った。「主は、すばらしいお方だ。正しい裁きを行われた。ナバルを正しく裁かれた。」その後、ダビデは人をやって、アビガイルに結婚の申し入れをした。

⁴⁰ダビデのしもべたちは、カルメル村のアビガイルの所に行って、そのことを申し入れた。

⁴¹彼女は地にひれ伏しておじぎをし、「このような者に、そのようなお申し出、まことにもったいのうございます」と言って、受け入れた。

⁴²アビガイルは早速仕度をし、ろばに乗り、五人の侍女を従えて、ダビデの使いの後に付いて行った。こうして、彼女はダビデの妻となった。

⁴³ダビデは、すでにイズレエルの出のアヒノアムを妻としていたので、二人妻を持つことになった。

⁴⁴他方、サウル王はダビデと結婚していた自分の娘ミカルを、ガリムの出のライシュの子パルティと無理矢理に結婚させていた。